「はあ………」
「りこ?どうしたの?」
勉強会の次の日。
つまり月曜日。(細かく言うと4時間目)
私は机に頬杖をついて溜め息を漏らしていた。
そんな私を見て不思議に思ったのか、隣の席に座っている友達が話しかけてくる。
「話聞いてくれる………?」
「あんたの事だからどうせ幸村絡みでしょ」
「エスパー!!!!?」
「りこが分かりやす過ぎるの!」
こうして授業中なのに友達と堂々と会話が出来るのは、今が美術の時間だからだ。(美術室は4人でひとつの机だから)
実際、私の手には水彩筆が握られているし、周りの子たちも熱心に自分の絵を仕上げている。
ちなみに今仕上げているのは花の絵で、机の上に花瓶と共に置いてあるんだけど……
なかなかうまく花の色が作れない。(困った……)
…………それにしても。
わかりやすいとは今まで散々言われてきたけれど、それはもしかして私が単純ってことを指してるの?
…いやまさか、まさかね。
うん、気にしない。
「……明日からテストでしょ、火水木金って。部活ってテストの3日前から活動禁止になっちゃうから…」
「帰宅なあんたには関係ないじゃない」
「それが大アリなのっ!!部活動禁止=テニス部が活動しない=幸村くんの応援できない!!私の中では大問題だよ!」
「あーはいはい、その熱意はわかったから筆振り回さないで。こっちに絵の具飛んできてるから」
「これだからテストなんて嫌いなんだ…!」
「…………話聞いてる?」
「幸村くんを観察する時間がないなんてええええ!」
今日は体育ないし、幸村くんに出会えるチャンスが全くないのに……
私、1日中彼に会えないなんて耐えられない…!
「昼休みにでも会いに行けばいいじゃない、あと5分くらいで授業終わるんだし」
「でも……迷惑じゃないかなあ」
「今まで迷惑かけっぱなしだったあんたが何言ってんの」
「…………ですよねー」
確かにいつもいつも迷惑かけっぱなしだった。
でもほら、私は幸村くんと全く接点ないし、だからこそ沢山アピールしていかなくちゃ私の事見てもらえないし……
自分でも、勝ち目のない恋だって分かってる。
彼には沢山のファンがいるし、ね。
でもどうしても幸村くんが好きなの。
彼以外は考えられないくらい、大好きなの。
………そんな事をもんもんと考えていたら、たまたま開いていたドアから生徒が見えた。
通り過ぎては、去っていく。
その様子をぼんやりと眺めていたその時だった、愛しの彼を見つけたのは。
思わず目を見開く私。
幸村くんの方も私の視線に気付いたのか、こっちに顔を向けた。
と、思ったら……にこり、彼の悩殺スマイルが。
そして、あっという間に去っていく。
その間、たったの3秒。
「っ、幸村くん!!!」
「ちょ、なに!?いきなり!」
「い、今、幸村くんが……!」
「はあ?」
「そこ、静かに作業して下さいねー」
「「は、はい…」」
先生の言葉に我に返る。
相当大きい声を出してしまったらしい、クラスメート全員がこちらを凝視していた。
「もう、りこのせいで怒られちゃったじゃん」
「だってだって!今、ドアの向こうに!」
「……ああ、C組のこと?さっき移動教室だったんじゃないの?」
「そうだったんだ………じゃなくて、さっき幸村くんが!」
「幸村が?」
「私を見て微笑んでた!」
「はあ?見間違いじゃないの?」
「見間違いじゃないよ、絶対!」
絶対私に笑いかけてたんだと思う!
…決めた、お昼休みになったら幸村くんに会いに行く!
授業中も、貴方を想う
(はやく授業終わらないかなっ)
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