「幸村くううううんっ!!」

「うわ、あっ」



そしてお昼休み。
ご飯を猛スピードで食べた私はC組に直行していた。
未だご飯を食べている最中の幸村くんに、後ろから抱きつく。

おおっ、ヘルシーなお弁当!
さすが私の幸村くん…健康には気を使ってるんだね!



「も、苦しいから離して、花島、さ…ん」

「あっ、ごめんなさい…!」



どうやら首を締めてしまっていたらしい、彼は苦しそうに顔を歪めていた。

ああっ、そんな幸村くんの表情も素敵…!
どんな表情も素敵だなんて……ああもう、なんでこんなにかっこいいの?



「まったく……何しに来たんだい?」

「それはもちろん幸村くんに会いに!」

「それだけか……」

「そうなんです」

「じゃあ俺に会えたしもう用は済んだよね。ってことでD組に帰っていいよ」

「そんな、せっかく会えたのに…」

「まだ用あるの?」

「…………ない、けど」

「じゃあ帰って」

「ううっ、幸村くんのいじわるー!」

「それを知ってるくせに花島さんは懲りずに俺の所に来るんだろ?」



………なんて減らず口を言う幸村くんに、私は何も言い返せなかった。

だって図星なんだもん。

私は彼に追い返されることを知っていて、毎回会いにきているから。

……そうだ、たまには強がってみるのもいいかもしれない。
いつも言われっぱなしじゃ、よくないよね?



「そっ、そんなことばっかり言ってると、も、もう会いに来ないからね!」

「そう」

「にっ、仁王くんとか丸井くんとか、他の人の所に行っちゃうんだからねっ!?」

「…………だから?」



そっけなく返事を返して、彼はご飯を口に運ぶ。
もぐもぐしているその口を見ていたら、ご飯がとても羨ましく思えた。
だって、ほら。
私なんかよりずっと待遇がいい。

…そんなの当たり前だって分かってる。
ご飯と私、比べ物にならないってことくらい分かってる。
そもそも食べ物と人間を比べること自体おかしいもんね。

でも、幸村くんを見ていたら……



「……っ、」



ぽろり、涙がこぼれる。
いつの間にか泣いていたみたいで、私は恥ずかしくなって俯いた。

どうしたら相手にしてもらえるの?
私、こんなにも好きなのに…っ


…周りがガヤガヤと騒ぎ始めて、はっと我に返った。
このままここにいたら、幸村くんに迷惑がかかる…………

そう考えた私は、小走りで教室を出て行った。



「………幸村」

「……ああ、柳か。どうした?」

「お前に用があって来たんだが………今のは」

「花島さんのこと?」

「あれは……放っておいていいのか?」

「…………いいよ、そのうち元に戻るだろうし」

「その確率は29%だな」

「へえ、随分低いんだね」

「今までしつこく付きまとっていたが、こういうパターンは初めてだろう。あんまり冷たくしすぎると後悔するぞ」

「……後悔、ね…どうかな」





押したり引いたり

(確かに初めてのパターンかもしれない)
(少し様子を見ようかな、)





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