「うふふふふ……!」

「……………」



真田の家を出てから3分程たった今、コンビニへの道を歩く俺の隣にはよく分からない声を出しながらニヤニヤと笑っている花島さんがいた。
はぁ、なんで俺が買い出しなんか行かなくちゃならないんだ。
………ていうか。
物凄く見られてる気がする…!



「…なにか用?」

「ううん、なんでもないよ!」

「じゃあなんで見つめてくるの」

「幸村くんの横顔、綺麗だなって思って」

「……………」



綺麗、か。
よくそんな恥ずかしい言葉を言えるなあ…
まぁ思ったことを素直に言うの、花島さんの良いところだと思うけれど。
でも素直すぎて、真っ直ぐすぎて、逆にどこかおかしいんだよね。
馬鹿というか、なんというか……
時々、予想もつかないことをする。
この間だって、廊下でいきなり抱きついてきたりとか。
体育の授業中、俺の名前を叫びながら走ってきたりとか。
…本当に見てて飽きない。(迷惑をかけられたりも、たまにするけど)

ちらりと横に視線を向けたら、彼女と目があった。
にこにことした笑顔を向けられる。



「やけにご機嫌だね」

「えへへ、そう見える?」

「うん」

「だって、大好きな幸村くんと2人きりでお買い物なんて、めったにないことだから!」

「…そんなに嬉しいかい?」

「うんっ」



本当に嬉しそうな顔をする花島さん。
前にもブン太たちに言ったけれど、寝顔とか笑顔とか、そういう外面的なところは女の子らしくて可愛らしいのにね。
どうしてこんなに中身とのギャップがあるんだろう。(人って不思議だ)
いつもいつも俺を追いかけてきて、どんなに容赦なく突き放したとしても、懲りずにつきまとってきて。
こんなにも俺に執着する理由は、一体なに?
好きだから?


『だって、大好きな幸村くんと2人きりでお買い物なんて、めったにないことだから!』


さっきの言葉が頭の中に響く。
大好きな幸村くん、か……
よく本人の前で堂々とそんなことを言えるよね、本当にすごい。(ある意味尊敬するよ)

それに……大好きって、本気?
いつもいつも言われているけれど。
それって冗談とかじゃなくて?

………やっぱり、いくら考えても花島さんの考えていることはよく分からないや…



「………あ」

「?」

「やばい、早く帰らないと雨降るかも」

「え、うわ、本当だ…!」



ふと空を見上げてみれば、そこにあったのはどんよりとした雲がだんだんと広がりつつある光景で。
ついさっきまでは暑すぎるほど太陽が輝いていたのに、今では見る影もなく辺りは薄暗くなってきていた。
傘なんて持ってきてないけれど、大丈夫だろうか?
なんとか真田の家に帰るまでは降らないで欲しいんだけど………



「見て、花島さん」

「んー?」

「コンビニ見えてきたよ」

「わ、ほんとだ!結構近いんだね!」



歩きだして10分くらいたった頃だろうか。
少し遠くのほうに看板が見えてくる。
目的地が見えたことにはしゃぐ彼女が、この時ばかりはいつもより少しだけ幼く見えた。
思わずふふっと笑みが零れる。



「ど、どうしたの?」

「花島さんってさ、案外子供っぽいよね」

「ええっ!」

「あ、もちろん良い意味でだよ?」

「(良い意味で子供っぽいってどういうことですか…!?)」



子供っぽい、と言われたことが相当ショックだったのか、一気に大人しくなる花島さん。
しゅん……としおらしく隣を歩く姿は、見ていてとても面白かった。
別に怒ったわけじゃないのに、どうしてそこまで落ち込むのだろう?
可愛らしい、って意味を込めて言っただけなのに。
どうせ彼女のことだから、そこまで深く意味を捉えることが出来なかったんだな。



「そんなに嫌?子供っぽいって言われるの」

「だって、さすがにもう中3だし……」

「あはは、それはごめん」



ぽんぽん、と頭を叩くと、彼女は少しだけ頬を染めて笑う。
本当に見ていて飽きないな、この子は。



「幸村くんこそ、中学生っぽくないよね」

「俺が?」

「うん、すごく大人っぽい」

「……ああそう、老けてるって言いたいんだ」

「え、あ、いや、そうじゃなくて!」

「うわーすごく傷つくなあー」

「ち、違うよ!!違うってば!」



わざとらしく傷ついたなんて言ってみれば、案の定花島さんは慌てだして。
オロオロとしながら俺に謝罪した。



「ごめんなさいっ、全然そういうつもりじゃ……!」

「じゃあどういうつもり」

「えっと、あの、幸村くんが老けてるわけじゃなくて、その…だから……」

「だから?」

「ほ、本当にすみませんでしたー!!」

「…………」



本当に面白いな、からかわれているのに気付いてないみたいだ。



「だから怒らないで……っ」

「ふふ、冗談だよ」

「………え、?」

「面白いなあ」

「…………!!!」



ネタバレしてみると、むくれながら小さく「幸村くんの馬鹿…」なんて呟く彼女。
「花島さんよりは馬鹿じゃないけどね」と言い返したら、「確かに……」と肩を落とした。



「でもまあ、愛しの幸村くんにならなに言われても許しちゃうよ」

「………そう?」



愛しの幸村くん、か……
聞き飽きたな。





本当に俺のこと、好き?

(慣れてしまって特別な感情など起きやしない)

台詞:)DOGOD69





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