「うああ、腹減ったあああ!!!」
そんな叫び声が聞こえたのは、ちょうど3時をまわったくらいの頃だった。
さっきまで隣で大人しく勉強をしていた丸井くんが、机の上に突っ伏して奇妙なうめき声をあげる。
私はノートから目を離し、彼を見た。
「ううう…お菓子……」
「……………大丈夫?丸井くん」
「駄目…………」
出た禁断症状………!
丸井くんって昔からお腹が空くとこうなんだよね。
だからいつでもお腹が空いたとき用にパンとかお菓子を持ってるんだけど…………どうやら、もう全部食べちゃって残ってないみたいだ。(周りにゴミが散乱してるし)
「だらしないぞ丸井!」
「真田……」
なんだか可哀想だなあ丸井くん。
そんなにお腹空いてるのかな?
まあ、私も少しだけ空いてるけど………
…と、そんなことを思っていたときに柳くんは話しだす。
目を閉じていて表情は読めないけれど、今はなんとなく呆れているように見えた。
「仕方ない、誰かコンビニへ行って食べ物を買ってきてやれ。このままでは勉強に集中できないだろう」
「……うむ、名案だ」
「はあ、まったくお前ってやつはどれだけ食べたら気が済むんだ……」
「そんなんだから体重が増える一方なんじゃろ」
「…また増えたんですか」
「丸井先輩……」
「うっ………べ、べつにいいだろい!」
口々に呟かれる彼への不満。
切原くんなんて、柳くんと同じで呆れた顔をしていた。
そして、私の愛する幸村くんはといえば………黙って彼に微笑んでいる。(なんか怖いよ…!)
でも、それにいちいち反応する丸井くんがすごく可愛い。
「コンビニに行くんなら、俺も買ってきてもらおうかな」
「あ、俺も」
「じゃあ俺も」
「なんだ、みんなもお腹空いてたんだね」
「花島は?」
「え、わ、私?うーん…甘いものが食べたい…かな」
そして仁王くんがメモにとる。
みんなの要望を一つ一つ聞いていたら、ものすごい量になった。
え、あれ全部でいくらになるの?
やけに多くないですか??
……まあ後でレシート見て、自分が頼んだ分のお金を買ってきてくれた人に返すんだろうけどさ……
でもそれ絶対に1人で持てる量じゃないよね?
「……で、誰が行くの?」
「「「……………」」」
一気に黙り込むみんな。
や、やっぱり行きたくないよね……!
だって私も嫌だもん。
ていうか私が外でたらまた迷子になると思う。
そしたらまたみんなに迷惑が…………うん、やっぱり嫌だ!
でも、絶対に誰かが行くはめになるわけで……
でも、みんなは行きたくないだろうし……
一体どうしたらいいの、この状況。
えっと、平等に決めるためには…………
あ、そうだ!
「あみだくじしよう!」
「え?」
「ほら、それなら平等でしょ?」
「確かにそうっスね」
「ピヨッ」
………だから「ピヨッ」ってなんなんですか。(意味わからないよ!)
私があみだくじを書けば、みんなはさっそく選びだした。
そして残ったやつに、自分の名前を書く。
はずれが8つ、当たりが1つだ。
「ええと、まずは柳生くん………あ、はずれだね」
「よかったです」
「次は………」
一つ一つ、くじが減っていく。
とうとう残ったのは私と桑原くんで、今まで誰も当たりを引くことはなかった。
当たりませんように当たりませんように……!!!
「桑原くんのがこうなって、ええと………あれ?」
「………ドンマイ、花島」
「え、ええええええー!!!?」
私の手元にある紙に書かれているのは、紛れもない事実だった。
桑原くんははずれで、私が当たり。
ま、まさかこんなことになるなんて…!
ていうか「残り物には福がある」って嘘でしょ!!?
全然福がないんですけどー!
え、えええ、私がコンビニに行かなくちゃいけないの?
確実に迷子になるよ!?
そして、改めてメモを見た。
「うわあ絶対一人じゃ持てない…」
「………そうだな、確かに女のお前じゃ重いんじゃねえか?誰かもう1人ついて行ってやれよ」
く、桑原くん優しい…!
「そうだな、じゃあもう一度やるか」
「また花島に迷子になられても困るしな、」
真田くんと柳くんが頷いて、もう一度あみだくじをやることになった。
誰が一緒に来てくれることになるのかな?なんて考えつつ私は近くで傍観する。
「「「………あ。」」」
「え?決まった?」
「…………」
「……あっ、ゆ、幸村くん…!!」
紙を覗き込めば、そこにあったのはマイダーリン幸村くんが当たりを引いたという結果で。
私は嬉しくて笑顔になった。
「やったー!幸村くんと一緒だなんて!」
「えええ………」
前言撤回、やっぱり残り物には福がある!
あみだくじ
(えへへ、幸村くんと2人っきりだ…!)
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