ああ、なんて幸せなんだろう。
憧れの幸村くんに勉強を教えてもらってるなんて…!
もしこの状況を幸村くんファンに目撃されたら、私の人生はその時点で強制終了されると思う。(恐ろしい……!)

でも、でもね。
立海の王子様である幸村くんに教えてもらうなんて、本当にすごいことなんだよ。
…だって、彼は高嶺の花だから。
私みたいな平凡な女の子じゃ、絶対に手が届かないから。
どんなにあがいたって、王子様は振り向いてはくれないのだ。
シンデレラだって、確かに普通の子だったかもしれないけれど、でも王子様に見初められたのは綺麗な姿でいたからだもん。
………でも、私は違う。
この世には魔法だってない。

それでも幸村くんを追いかけてしまうのは……どうしてかな?

………やっぱりね、好きだからなんだと思う。
好きだからこそ、どうしてもどうしても振り向いてもらいたくて。
だから私は少しでも彼の瞳に映るよう、頑張ってアピールするの。



「…考え込む暇なんて花島さんにはないだろ?」

「!あっ、ゆ、幸村くん…」

「ほら、これで最後だから頑張って」

「うん!」



ぼんやりと考え事をしていた私に、幸村くんが注意をする。
慌てて手元を見れば、問題はあと残すところ1問だった。
数学が苦手教科である私がここまで全問解くことが出来たのは、幸村くんと仁王くんがゆっくり分かりやすく教えてくれたおかげだ。
2人とも教えるのが上手いんだなあ、幸村くんが頭いいのはわかってたけど、まさか仁王くんまで頭がいいなんてびっくりしたよ。(テニス部って文武両道なんだ…)



「えっと、ここをこうして……できたー!」

「よくやったのぅ、花島」

「頑張って公式覚えればなんとかなるんだね!」

「まあ、このままいけば70点は確実に取れるんじゃないかな。ね、仁王」

「おう」

「えへへ、ありがとう2人とも!」



お礼を言いつつ、私は数学の教科書やノートをしまう。
次はなんの教科を勉強しようかな………

と、考えていたその時。



「花島せんぱーいっ、英語教えてください!!」

「わわっ、切原くん」



ひょこっと私の後ろから現れたかと思えば、彼はにこにこと人懐っこい笑顔を向けてくる。
そして私と幸村くんの間に座った。(せっかく隣同士だったのに!)

でも良かった、切原くんが教えてもらいたいのが英語で。
私、文系だから英語ならできるほうだもんね。
それに2年生の問題なら3年生の私でも余裕で解くことが出来るはず…多分。



「どこがわからないの?」

「えっと……ここ、が……」

「あ、ここはhaveと過去分詞を使うんだよ」

「なんで?」

「なんでって言われても困るんだけど……」

「だって、haveって『〜を持っている』とかいう意味じゃないっスか」

「でも、この『〜される』っていう受け身の文にはこれを使うんだよ」

「へえー……」



感心しながら、彼は問題の空欄箇所を埋める。
なつかしいなあこの文法……とか思いつつ、私はその様子を眺めていた。

でも…あれ?

そこ主語がheだから、hasにするんじゃ…………
ていうか動詞間違ってるし!
writeじゃなくてwrittenだし!



「さっき私、過去分詞使うって言ったじゃん…!」

「えっ!?」

「ここ、全部間違ってるよ」

「そんな……!過去分詞ってなんなんスか!?」

「え、疑問に思うところそこ!?」



………やっぱり、切原くんはすごくすごく英語が苦手らしい。





そこ、間違ってるよ

(誤答ばっかり……って私も人のこと言えないけど)





:)戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -