「だから、ここは違うって言ってるだろ?」

「どうしたらそんなに間違えるんじゃ」

「うう………」



右と左から、厳しいお言葉が降り注ぐ。
現在、私は幸村くんと仁王くんに数学を教えてもらっていた。
いつもならこんなに間違えたりしないのに………なんで?
好きな人にいいところを見せようとする度、間違いを重ねていく自分にほとほと呆れかえる。
なんでこんなにうまくいかないんだ……!!



「あ、あれ?」

「だから、ここはこうやって………」

「こう?」

「違う、そこはyだよ」

「ええっ!そんな馬鹿な……!」

「馬鹿なのはお前さんの頭ぜよ」

「仁王くんひどいー!」

「まあまあ、抑えて。本当のことなんだから仕方ないじゃないか」

「ああっ、幸村くんまで…!」



笑いながらさらりと言ってしまうところが幸村くんらしいというか、なんというか。
胸にぐさりと刺さる容赦ない言葉に、幸村くんの愛を感じる。
……これは愛だよね?そうなんだよね?
そ、そうだと私は信じますっ!



「そうよ、幸村くんは絶対に私を愛してくれてるわ…!!」

「意味の分からないことをぶつぶつと呟かないでくれないかな」

「え、」



ふふふ、とにこやかに笑いかけてくる幸村くんに、目が点になる。



「ま、まさか私ってば声に出してた……?」

「うん」

「えええっ、そんな!」



なんてことだ……!!!(恥ずかしすぎる!)
いや、でも間違ったことは言ってないから大丈夫…かな?
私はおかしなこと言ってないもん。(多分…)
幸村くんはきっと照れてるだけなんだよね、うん。
だから、さっきの冷たい言葉もきっと照れ隠しなんだよね。

……………そうだと信じたいなあ!(どうしよう自信がなくなってきた)



「相変わらず幸村大好きじゃのう、花島は」

「えへへ、もちろんですよー!」

「……うわ、なんかイラついてくるんじゃけど」

「え?」

「やっぱ幸村やめて俺にせんか?」

「こら仁王、そこで口説かない」



ずいっと身を乗り出して接近してきた仁王くんに、思わずたじたじになる。
ていうか顔が近い……!!とか思っていたら、幸村くんに引き寄せられて、仁王くんから遠ざかった。
うおぅ!!今度は幸村くんに近い!



「今は勉強中だろ」

「わかっとるって」

「わかってる割には話を飛躍させすぎだと思うけどね」

「はいはい、」

「……………」



異様なムードの2人に、間に挟まれてる私はどうしようかと焦った。
むっとした表情の幸村くんと、余裕そうな表情の仁王くん。(正反対の顔だなあ…)
ど、どうしよう!
こうなったら私が雰囲気を変えなくては……!

そう思い、行動に移す。



「やめて!私を巡って争わないで…!」

「「争ってないから」」

「あ、そうですか…そうですよねー……」



ああ、せっかくの私の勇気が無駄に……!
別に、私のために争ってるとか本気でそう思ったわけじゃないけどさ。
でもそこまではっきりと否定されると、いくら私でも悲しいなあ……
なんだか、嫌われてるように思えてくるじゃないか。

……え、まさか本当に2人に嫌われてるわけじゃないよね?
仁王くんはともかく、幸村くんに嫌われたら私もう生きていけない…!!



「ゆゆゆ幸村くん、私を嫌わないでー!」

「どうしたの?いきなり」

「幸村くんに嫌われたら私はこれからどうすればいいの……!」

「え、話がまったく掴めないんだけど」



話が噛み合っていない私たち。
でも、そんなのはいつものことだ。(よくみんなから言われるしね)



「まあいいや、早くその問題を終わらせよう?」

「うん……」



………「まあいいや」で済ませられちゃったよ。
でも………私は彼が好きだから、なに言われても、なにされても許しちゃうんだよね。





ベタ惚れ少女

(幸村くん大好きだぁぁ…!!)

title:)DOGOD69





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