「よし!いってきまーすっ」
それは約束の50分ほど前のことだった。
鞄に教科書やらペンケースやらいろいろなものを入れて、元気よく家を出た私。
手には、丸井くんお手製の真田くんち(集合場所)への地図をしっかりと持って。
………………でも。
20分ほど歩いたところで、ひとつ問題が起きた。
「うーん………ここどこ?」
さて、私は今どこにいるのでしょう。(自分でもわかりません)
あれれー?
地図通りに来たはずなのに、なんで?
とりあえず現時点で分かるのは、目の前に大きなコンクリートの壁があって行き止まりだということだ。
たしか、地図によるとここにはコンビニがあるはずなんだけど………うん、ないね。
見渡すかぎり、ない。
ああもうっ、なんでこうなるの!
「仕方ないから来た道を戻ろう………」
そう言って、さらに20分。
あちこちを行ったり来たりして、私はさらによく分からないところへ辿り着いた。
そして、今度の私の目の前には、大きな空き地が。(………なんで?)
ああもう、本当に意味分かんない…!!
来た道を確実に戻ってるはずなのに、どうして見たこともないような未知の場所に行き着くのーっ!!
……ほ、本当にここどこ?
誰か助けてぇぇぇ!!!
「てか丸井くん………この地図全然役に立たないよ……」
ちらり、手元にある手書きの地図を見る。
ごちゃごちゃしててかなり見づらいから、私がこうして迷子になったのはたぶん丸井くんのせいだと思う。(いや、絶対に約80%は彼のせいだ!)
……………はあ…
これからどうすればいいの……
だってもういつのまにか集合時間まで10分きってるよ?
ぎゃああ、真田くんに怒られるぅぅ!!!
無断で遅刻なんてしたらどうなるか…!(確実に怒鳴られる!)
やばい、真田くんに遅れるって電話しておかなくちゃ…………って私真田くんの番号知らないし!
ぎゃー!どうすんのー!!
遅刻なんてしたら幸村くんの私に対する評価が下がっちゃう…!!
だらしない女だって思われたくないよぉぉお!
と、とりあえず誰かに迎えに来てもらわなくちゃだよね…?
そうだ、丸井くんに電話しよう!
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「おー、なんだ皆来てんじゃん」
「あ、ブン太」
真田んちの門の前にて、見慣れた奴らに出くわす俺。
そこには幸村をはじめとして、仁王、赤也、ジャッカル、柳、柳生たちがいた。
……………あれ?花島は?
「花島はまだ来てねえの?」
「そうみたいだよ」
「ふーん………」
なんだよあいつ、俺が天才的にすっげえ地図を書いてやったっつーのに、まさかの遅刻かよぃ。
ったく、寝坊か?(……あいつなら本当にありえそうで怖い)
そして一度みんなで真田んちに入って、中で花島の到着を待つことにした。
……相変わらず和風な家だよな…とか思いつつ、案内された和室でくつろぐ。
「花島はまだ来ないのか?あれだけ念を押しておいたのに遅刻とは、たるんどる!!」
「うんうんそうだね、わかったから黙りなようるさいな」
「「「…………」」」
なんの感情も籠もっていない淡々とした声(しかも結構早口だった)で、幸村は真田を軽くあしらう。
周りでそれを聞いているだけの俺たちは、沈黙するほかにリアクションが出来なかった。
………それから、何分か経ったころ。
俺の携帯がいきなり震えたことによって、沈黙が破られる。
電話に出てみると、それは…………
「まったく、こんな時に誰だよぃ…………って、花島じゃん」
『まーるーいーくーんーっ!どうしよー!』
「はあ?」
『迷ったぁぁ!!』
「はああああ!!!??お前今どこだよ!」
『それがわかんないから困ってるの!ここどこ!?』
「知らねえし!」
てか中3にもなって迷子かよぃ。
どんだけ馬鹿なんだお前!
『とりあえず、迎えにきて?』
「なんで俺が」
『お願い…丸井くんにしか頼めないの』
「っ!」
くそ、ムカつくくらい可愛いな!!
花島はたまに、すげえ可愛いときがあるからマジ反応に困る。
あーくそ、今の俺かなり顔が赤い気がする。
「それが人に頼みごとするときの態度?もっとちゃんとしたこと言えるだろい」
『うっ……!』
ちょっとだけ、強気に言ってみる。
周りの奴らが聞き耳を立てているのがよく分かったけれど、そんなの無視だ。
……さて、花島がどんなことを言ってくるのか、楽しみだな。
『ま、丸井くん……』
「あ?」
『お願いしますっ』
「だから?」
『えっと………あ!じゃあ、丸井くんの好きなケーキ屋さんのバイキング無料券2人分あげるから!』
「しょうがねえなあ!」
『(即答……)』
「…あ、その代わりに、それお前が一緒に行くんだぞ」
『え、私?』
「そ。忘れんなよぃ?」
『あ、うん…』
我ながら、かなり現金なやつだと思う。
けど、ケーキバイキングだって!
しかも花島と一緒に!(やった!)
「で、周りになにがあんの?」
『あ、えっと………空き地と、ガソリンスタンドかな』
「おっけ。じゃあ今行くから」
『うん!』
パタン、と携帯を閉じる。
その途端に周りの奴らの視線が一気に注がれた。
特に仁王。ニヤニヤすんな!
てか幸村は幸村で笑顔が怖えし!
「………な、なに」
「ふーん、花島と2人でバイキングねえ……」
「それがどうしたんだよ」
「ブンちゃんのくせに生意気じゃ」
「そうだね、生意気だよ」
「(ゆ、幸村まで…………!!)」
つーか仁王、ブンちゃんとか呼ぶなよ気色悪ぃな!
それになんで俺がこんなに責められなくちゃならないんだよ…!!
理不尽に思えてきた俺は、さっさと花島を迎えに行こうと立ち上がった。
「ちょっと迎えに行ってくる」
「やっぱり迷子だったのですね」
「…花島ならありえるな」
「じゃあ俺も行くよ。いいよね」
「え、」
「じゃあ俺もー」
「って仁王もかよ!」
柳生と柳がため息をついた後に、幸村と仁王が発言しだす。
……………こうして、結局3人で迎えに行くことになった。
俺にとっては、どっちもお邪魔虫なんだけれど。
それにしても、まったく花島は何やってんだよ…
普通は迷子とかありえねえだろい。
……でも、花島の場合は違うんだ。
なにをするか分からないというか、奇想天外というか。
目が離せないんだよなあ。
バカだから余計にだ
(ま、そんなとこも好きなんだけどさ)
title:)DOGOD69
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