私には好きな人がいる。
それはもう凄くかっこよくて美人で儚げで細くてテニスが上手で無敵で、なんていうか、とにかく素敵な人だ。(良いところがありすぎて言い切れない!!)
そしてその彼は、なんと私と違うクラス。
……というか、隣のクラス。
……………ねえ神様はいないの?
もし、いるのならば。
なんで、なんで私を彼と同じクラスにしてくれなかったんだよおおおおおっ!
「知るかっ!!」
「いだっ…!!」
「いちいちうるさいよりこ!」
「え、私声に出してな…」
「いやいや、もろ出てたからね、」
「えええええ」
それじゃあ私の幸村くんに対する莫大な量の愛をクラスメートの人々に知られてしまったということじゃないですか!(…いや、よく考えてみればもうかなり前から知られてるような気がするけど)
ああ、皆の視線がぐさりと痛い。
一生のお願いですこっちを見ないでください……!!
「あっ、幸村だ」
「えっ、うそ!!まじで!」
廊下のほうを見て言った友達の発言に、勢いよく反応する私。(勢いよすぎて椅子まで吹っ飛んだ)
そちらを見れば、颯爽と廊下を歩いている、愛しの彼が。
ああ、今日も変わらずかっこいい!
…………隣で友達が呆れた顔してるけど、今の所はスルーしておこう。
それより今は……彼の元へ!
「幸村く―――――んっっ!!!!」
「え…うわ、花島さん」
ガラッ、と教室を飛び出して、軽く叫びつつ正面から抱き着く。
幸村くんはそんな私をきちんと受け止めてくれる………………………………………はずもなく、華麗に避けられて私は見事に床へとなだれ込んだ。(くそっ、さすが私の幸村くん………!)
派手にぶつかったおでこが、じんじんと鈍く痛む。
「い、いたい……」
「前はちゃんと見ようか。それと、廊下は走らないこと」
「へーい……」
「やけに投げやりな回答だなあ」
「だって、幸村くんさえ避けなければ私は今頃あなたの腕の中だったのに!」
「ふふ、絶対ありえないからね」
にっこりと微笑む彼に、きゅん、と胸がときめく。
あああ、私に笑いかけてくれた!(言われた言葉は残酷なものだったけれど)
今日は最高についてる日かもしれない!
「じゃあ俺はこれで。もう猪みたいに突進してこないでね」
「ちょ、ちょっと待ったあああ!」
がしっ、と腕を掴んで彼を見上げれば、私のほうへ向く彼の麗しい顔。(あ…、あまりのかっこよさに鼻血でそうになった!)
もう少し話していたいとか言ったら気持ち悪がられるかなー
……ていうか、ちょっと待てよ?
さっき幸村くんに、猪みたいにって言われたよね私………!!
ぎゃああ、私ってば今までそんな風に思われてたのか!
めちゃくちゃ悪印象じゃん!(好きな人からの印象が、よりにもよって猪だなんて)
「まだなにか用かい?」
「いや、そうじゃないけど、えーと、」
「じゃあ行くよ」
「待ったああああっ」
「だから一体なに……」
「まだ充電してない!」
そう言い放った瞬間に、「え?」なんてすっかり油断をしている幸村くんに抱き着く。
近距離だったせいか、いとも簡単に目的を達成できた。
目を見開いた彼の表情は、私だけがみられる顔だ。(今のところは、ね)
「ふふ、勝手に俺に抱き着いた代償は重いよ。覚悟しておいてよね」
「イエッサー!」
たまには無鉄砲に行動するのもいいかもしれないな、なんてね。(それを口に出したら溜息をつかれたの、「花島さんはいつもそうだろ」って)
だいすきなひと
(それは幸村くん!)
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