「あーかーやああああ!!」



ドアの前で仁王立ちをして、こちらを物凄い表情で見てくる男の人。
私と同じ風紀委員会であるこの彼の名は…………真田弦一郎くんだ。
…す、すごく睨まれてる気がする。
それはもう、ひしひしと感じる。(怖いよーっ)
でも本当は優しい人なんだけどなあ真田くん。
委員会のときだって何かあれば助けてくれるし、この間だって校門で制服検査してたときに私が男子に喧嘩売られてたところを柳生くんと一緒に助けてくれたし。
ただ、怒るときは物凄く怖いけど………
本当に鬼みたいに怒鳴るけど………(しかも男女関係なく)



「さささ、真田副部長……!!!」



っていうかうろたえてどうすんの切原くん!!
遅刻したのは自分が悪いんでしょうが!



「今を何時だと思ってる!!」

「す、すんませんでしたーっ!今すぐ着替えて朝練参加します!」

「もう終わりの時間だろう!」

「………………あ、あれ?」

「このたわけが!!」

「ぎゃー!!」



あーあ、めちゃくちゃ怒られてるよ彼。
可哀相だなあ………なんて、思わなくもないけれど。(誰だってあの顔で叱られれば怯えるもん)
そして、ぼんやりと切原くんと真田くんのやりとりを眺めていたら、私の大本命の人がやってくる。



「なんだ赤也、今頃来たのかい?」

「幸村部長……!」

「きゃああ幸村く――――ん!!!!」

「………え」



思わず彼の元へダイブすれば、面食らったような表情になる。
まるで「なんでこんなところにいるんだ?」とでも言いたそうな顔で。(べ、別に嫌そうな顔じゃないよ!……多分)
あああ、そんな表情もまた最高に麗しくて素敵でございます!!
やべ、めちゃくちゃテンション上がるー!
……でも幸村くんがそんな表情をしているのもつかの間で、あっという間に私は引きはがされた。



「赤也?これどこで拾ってきたの?」

「え、えーと………あははは…」

「今すぐ10文字以内で説明しろ」

「とりあえずすんませんでしたああああ!!」

「残念、字数オーバーだ」

「ええええ!?だって無理っしょ10文字って!」

「はあ………言い訳は見苦しいよ」

「(そんな……!)」



幸村くんが切原くんと話している間も、いいなあ、なんて羨んでみたり。
幸村くんを、独り占めしてみたい、なんて思ってみたり。(まあ無理な話だけどね)
テニス部のみんなはいいなあ、いつでも部活で彼に会うことが出来るのだから。
私なんて、自分から会いに行こうとしなければC組との合同授業のときしか会えないというのに。
こーゆーとき、幸村くんが近所に住んでたらなあ、と思う。
そうしたら、暇なときとか家に押しかけて行くのに。
あっ、今度住所教えてもらおうかなあ……(拒否されそうだけど)
いやいや、諦めるな私!!
諦めの悪いところが私のとりえじゃないか!!
聞いて、もし拒否されたら無理矢理あとをつけていくまでだよね!



「……花島さん、今よからぬ事を考えなかったかい?」

「え?」

「かなり嫌な予感がしたんだけど…」

「あ、あははは………」

「ふふ、その顔は図星みたいだね」

「いや、その……なんでもない、よ?」

「…………」



いっ、嫌あああああ!!
そんな変なものを見るような目で私を見ないでー!
ひどい、ひどいよ幸村くん。
あとをつけていこうだなんてそんな最低なことを考えた私が悪いのかもしれないけどさ、でももしそれで変人として通報されたとしても私は絶対に警察に捕まらない自信があるよ!
だってこれは幸村くんへの溢れ出る愛故の行動だもの……!!(愛があればどんな壁でも軽々越えられるはず……だよね、きっと)
……なんて私が脳内で思いを馳せていたら、テニス部の彼らは話題をくるっと変えて話し出す。



「それにしても。やはり遅刻はいけないよ」

「幸村、こいつになんとか言ってやってくれ」

「了解。ねえ赤也これ今月に入って何回目だかわかってるよね?」

「さ、さあ……」

「わ・か・っ・て・る・よ・ね・?」

「はいもちろんわかってるっス!!」

「まったく懲りないなあ………」



いいないいな、私も幸村くんに怒られたい……!
そしてぜひその麗しい瞳に私の姿だけを映してください……!!



「……花島さん」

「はい?」

「声。声に出てる」

「わわっ、マジですか!」

「ふふふ、怒られたいならお望み通り怒ってあげようか……?」

「……っ!!」



幸村くんの恐ろしいにっこり顔といつもより低くされた声によって、思わずびくりと震え上がる。
一瞬、なんて軽率な事を言ってしまったんだと後悔した。
今となっては私の何が幸村くんをそこまで怒らせたのかよくわからない。(どうしよう心当たりありすぎる)
ああでも、幸村くんになら私……っ!!



「もちろん覚悟はできているんだろうね?花島さん」

「えっ、あ…………ええと…」

「できてないの?」

「い、いやできてます!!いつでもできてます!!」

「そうか、じゃあ遠慮なく………」

「あっ、幸村く……っ」

「はあ………幸村、花島をからかうのはいけないな」



前触れもなく突然、また部室のドアが開いたと思ったら。
今度は5人も一気に部屋へ入ってきた。
丸井くん、桑原くん、仁王くん、柳生くん……………それと、昨日丸井くんたちから名前を教えてもらった柳くんだ。(ちなみに今喋ったのは柳くんね)
あれ…………?
柳くんとは今まで面識が全然無かったはずなのに、なんで私の名前を………
……………まあどうでもいいか。



「なんで名前を知っているんだ、とでも言いたそうな顔だな」

「えっ?」

「フッ………理由がわからないのなら教えてあげてもいいぞ?」

「あ………なんでなの?」



そう聞いたら、彼はまたもや微笑んだ。



「お前が、この部では有名だからだ。幸村の熱烈なおっかけとして、な」

「………えええええー!!」



それ前にも誰かに言われたような気がするんだけど…………誰だったか思い出せない。

ていうか、これマジなの?
え、すごくない?





わたし、有名人?

(てかこの人と話したのも初めてだ…)





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