いつもより何十分も早い朝。
私はかなり早起きして学校に来ていた。
もともと朝に弱い………というか早起きが苦手な私にとっては、これってすごく辛い。
でも一刻も早く丸井くんたちに会って昨日の失態を謝りたかったんだよね……
いつのまにか私寝ちゃうし。
迷惑かけただろうなあ…
ほんとにごめん、皆!
「あれー、花島先輩じゃん」
「え?あ、切原くん!」
「はよっス!」
「おはよ」
後ろから声がして、くるんと振り向けば、そこにいたのはこの間知り合ったばかりの切原くんで。
人懐っこい笑顔を向けるものだから、こっちまで心が温かくなった。
可愛いんだよね、切原くんて。
知り合ってからは廊下で会ったりすると、きちんと挨拶してくれるし。
悪ガキなとこもあるけど、でもそーゆーとこも全部含めて可愛い後輩だ。
「なにしてるんスか?」
「私は丸井くんたちに用事があって……ていうか赤也くんこそ、こんなところでなにしてるの?たしか今日は朝練あるよね?」
「う………まあ確かに朝練はあるんだけど、その…」
「……………遅刻か」
「へへっ」
「いやいや笑ってる場合じゃないからね」
加えて、早く行かないと幸村くんに怒られちゃうよ?なんて言ったら、彼は見事に顔面蒼白になった。(なんだか面白い)
幸村くんって怒るとそんなに怖いのかな?
でも私は幸村くんになら怒られてもいいかな、なんて思う。(むしろ怒られたい…!)
……そんな不謹慎なことを考えていたら、切原くんにガシッと腕を掴まれた。
「先輩!行くよ!」
「は?え、ちょっ……!」
いきなり走りだす切原くん。
腕を掴まれてる私も自動的に引っ張られる形になって、あまりの速さに息切れしつつも着いていく。
連れていかれたのはひとつの部屋で、その中に私は強制的に入らされた。
きょろきょろと見渡すと、トロフィーや賞状が綺麗に飾られていた。
……どうやらここは、テニス部の部室らしい。
ということは幸村くんはいつもここで生着替えを……っ!!?
いやいや、想像しちゃ駄目よりこ。
幸村くんが上着脱いでるところなんて想像しちゃったらそれはもう変態じゃないか…!
私はまだ変態じゃない!(ていうかこれから先も変態になる予定は一切ない!)
……でも、きっと引き締まった綺麗な体してるんだろうなあ。って、だから想像しちゃ駄目だってば私いいいい!!!
「一体どうしたんスか?先輩」
「っ!いけない、私ったらまた自分の世界に……」
「………なにそれ」
じっとり、変なものを見るような目でこちらを見てくる切原くん。
仮にも先輩に向かって、その目つきは失礼だぞっ!
まあ切原くんなら私は許しちゃうけれど。
「ていうか私、こんなとこに勝手に入っちゃって平気なのかなあ」
「へーきへーき!先輩たちは朝練してていないんだし」
「でも…」
「大丈夫だって言ってるっしょ?ここで待ってれば必ず丸井先輩に会えるんだから大人しくしててくださいよ」
「…はあーい……」
そうだ、ここにきた1番の理由は丸井くんと桑原くんと幸村くんに会うためなんだから、今は素直に彼の言うことを聞かなくては。
そう思いつつ部室内の椅子に座らせてもらい、ぼんやりと周りを見渡した。
ロッカーを開ける切原くん。
どうやらあれが彼のロッカーらしい。
そして鞄の中からオレンジ色っぽいジャージを出したと思ったら……………
いきなり、制服を脱ぎだす。
「わ、ちょっ、待った!!」
「へ?」
「まさかここで着替えるの?」
「当たり前でしょ、ここ部室なんスから」
「うっ………そりゃそうだよね、ごめんなさい」
そう言ってから、彼にくるりと背を向ける。
堂々と目の前で着替えられては自分の心臓がもたないよ…
どうして恥ずかしげもなく異性の前で脱げるのかなあ、男の子ってやつは。
女の子には絶対真似できない。
「なんだ、先輩ってば照れてんの?」
「う、うるさい!」
「かっわいー!」
「こら、年上をからかうな!早く私が後ろ向いてる隙に着替えなさいっ」
「はーい………………あっ……」
「………え、どうかした?……あっ……」
切原くんが変な声を出すものだから、私も反射的に彼の方を向く。
そしたら口を開けてドアの方を見ていて………
一体どうしたのかとそちらへ視線を向ければ、ドアの所で仁王立ちしている男が。
私もよく知っている人物で、その人とは委員会が同じだ。
心なしか……………
眉間にシワが寄って、る?
いや、これ気のせいじゃないよね、完全に怒ってるオーラ発してるんですけど……!
「あーかーやああああ!!」
ぎゃああ誰か助けてー!
スーパーマンはいないけれど
(近くに、めっちゃ怯えてる後輩ならいます)
title:)DOGOD69
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