「………………ここは、どこ?」



薄暗い部屋の中で、目を覚ます。
むくりとベッドらしきものから起き上がって明かりをつければ、そこは毎日見慣れている自分の部屋で。
なんでこんなところにいるんだ、とパニックを起こした。
ほ、ほんとになんで私ってば自分の家に帰ってきてるの?
え……………瞬間移動?(いやいや、ありえないでしょ)
たしか私、さっきまで丸井くんの家にいなかったっけ……?
丸井くんと桑原くんと、そして私。
三人でたわいもない話をしていたはずだ。
それで………………ああそうだ、途中で眠くなっちゃったんだっけ……

………ていうか私パジャマだし。
なんで?制服は?……なんて不思議に思い周りを見渡せば、自分の制服は丁寧に壁に掛けてあった。(だだだ、誰が着替えさせたのー!?)
窓から外を見ればもうすでに暗くなっていて、すかさず時計を見たら……………



「く、9時………!!!?」



…どうりで暗いわけだ。(まさか9時だなんて…!)
ううう、なにも覚えてないよぅ………
一体どうやってここまで帰ってきたの?



「はあ…お母さんに聞くしかないのかなあ」



そう言いつつ、2階に位置している自分の部屋から、リビングにいるであろうお母さんの元へと向かった。
ガチャ、とリビングのドアを開ければ、テレビを見ながらソファーに座っているお母さんの姿が。



「あら、起きたの?」

「ん………」

「まったく…りこってばブンちゃんちで寝ちゃったんですって?ジャッカルくんがおぶってきてくれたのよ?」

「え……く、桑原くんが…!?」

「そう。それにブンちゃんは荷物持ってきてくれたし」

「う、うそ……」



やっぱり、やっぱり予想通りか…!
よく考えてみればそうだよね、あの二人以外に寝てる私を連れて帰ってくれる人はいない。
さ、最悪だ絶対明日あやまらなくちゃ…!!
うう、桑原くん大変だっただろうなあ……(こんなことならダイエットしておけばよかった)
…………マジ泣きそう。
なんで私寝ちゃったのおおおお!!



「そういえばりこ、」

「ううう……なに?」

「ブンちゃんやジャッカルくんと一緒にいた、あのめちゃくちゃかっこいい子誰?」

「………………へ?」



いやいや、誰?と言われましても。
私こそ聞きたいよ!
だって二人以外に私と一緒にいた人はいないし………
だとしたら、私が寝ているときに誰かと会って、一緒にここまで送ってきてくれたということになる。



「ど、どんな人だった……!?」

「えーと……髪に緩くウェーブがかかってて、物腰が柔らかくて優しそうな…」

「名前は!?」

「たしか、ゆ、ゆき……?」

「もしかして幸村精市くん!?」

「ああそうね、そういう名前だったかしら?お母さんのタイプなのよねえ、まあブンちゃんも可愛いしジャッカルくんもワイルドで素敵だけど」

「きゃああああ!」



ままままままさか、私の愛しの幸村くんだったなんて……!!
や、やだ!どうしよう!
喜んでる場合じゃないよ!
寝顔見られた可能性大じゃないかああああ!!(ていうか絶対見られてる!)
丸井くんたちも、彼に会ったのなら起こしてくれればよかったのに…
幸村くんに会いたかったよ…
少しくらいお話したかったよ…
あああ、どうして私が寝てるすきに幸村くん登場しちゃったんですか馬鹿馬鹿馬鹿――――っ!!
……うう、マジで泣きたくなってきた。
ていうかさ、今お母さん幸村くんのことかっこいいとか言ったよね?
さっすが私の親……!!(話が合う!)
好みまで一緒だなんて、やっぱり親子だ!



「えへへー、幸村くんかっこいいでしょ!すっごくモテるんだよ!!」

「あらそうなの?」

「そう!それでね、すっごく優しいの!………時と場合によっては」

「時と場合?」

「あ、いや、なんでもな…………………あ!」

「え?」



笑ってごまかそうとしたところに、突然あることに気付く。
まさか、とは思うけど違うよね?
絶対違うよね?



「お、お母さん」

「なに?」

「三人とも、私の部屋に入ったりはしてない……よね?」

「あはは、なに言ってるの!お母さん一人であなたを2階の部屋まで運べると思ってるのかしら?」

「いやあああああーっ!!」

「あら、別にいいじゃない。ブンちゃんたちはりこの部屋に何回も入ったことあるんだし、今更恥ずかしがらなくても………」

「そーゆーことじゃなくて!だって今回は幸村くんがいたのに……っ!!くそ、念入りに掃除しておけばよかったあああ!!」

「『ふふ、可愛い部屋ですね』だって」

「そそそ、そんな馬鹿な!」



まさか最愛の幸村くんに部屋を見られるなんて。
あんまり散らかってなかったとは思うけど、それでも少し心配だ。(もし呆れられてたら私はどうすればいいの…!)
お願い、誰かこれは夢だと言って!!



「まあいいじゃないの、部屋くらい。着替えさせてもらったわけじゃないんだし」

「だからそーゆー問題じゃ……………って、じゃあパジャマに着替えさせてくれたのはお母さん?」

「当たり前でしょ?制服がシワになっちゃうもの。ていうか男の子に着替えさせてもらうなんて百年早い!」

「ちょ、そんなこと全然思ってないからっ!」



あ、でも幸村くんになら………………ってそうじゃないだろ私!
よかった、着替えさせたのはお母さんで。
お母さんってばめんどくさがりだからなあ………
まさか着替えまで頼んだのかと思ったよ。(この人ならやりかねないもん)

……それでも、部屋を見られてしまったということは変わらない事実で。
どうしよう本気で恥ずかしいんだけど…っ!





気付いたら自分の部屋

(ありえなさすぎる…)





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