「二人ともやけに楽しそうだね?」

「ゆっ、ゆっ、幸村くん……!!」



遠くから歩いて来て、私の目の前で止まる幸村くん。
やけににっこりとしているのは………気のせい?
なんとなく機嫌が悪そうだけど、でもそんなあなたも大大大好きです…っ!!!
幸村くんを見ていると、いつも胸がときめいてしまう。
本当に大好き、なのだ。
私だけのものにしたいくらい…
まあ、私の愛はいつでも一方通行だけれど。(少し冷たいところも好きだー!!)



「確かに楽しいが、なあ花島」

「私は楽しくないーっ!」

「照れてるところも可愛いナリ」

「ひいい………っ(照れてねーよ!)」

「花島さん」

「へ……あ、はい…っ」

「おいで」



いきなり、というかかなり突然に、そんなことを言い出す彼。
思わず鼻血が出そうになるけど、それはなんとか食い止めた。
だってだって……っ!!!
なんですかあの殺し文句……!!!(きゃああああ!)
い、今の台詞聞いた!?
私に優しく微笑んで、おいでって…!
えっ、今すぐあなたのその軽く広げた両腕の中に飛び込んでいいのですか!?
ややや、やばいよ嬉しすぎて倒れそうだよう…………っ!



「仁王のところより俺のほうがいいだろ?」

「はいもちろんですとも!!!」

「なら…おいで?」

「きゃあああっ幸村く…………………ぐえっ」

「そうはいかん」



彼に飛び込んでいこうとしたところに、後ろから仁王くんが離すまいと力を込める。
く、くくく苦しいんですが……!!!
私は今すぐ愛しの幸村くんの元へ行かなくてはならないというのに、一体どうすればいいんだ!
あ、あれか。
あいつ私と彼の邪魔をして楽しんでるな…!?(性悪なやつめ!)
あああ神様、助けてください。
そしてどうか私を楽園(幸村くんの腕の中)へ………っ!



「うぐぐ……っ!離してよぅ……っ!!」

「えー、どうしようかのぅ」

「ぎゃああセクハラ男がー!!幸村くん助けてー!」

「…ふふっ……騒がしいな。仁王、いい加減彼女を離してやったらどうなんだ?」

「そんなこと言っとるけど、実は羨ましいんじゃろ?」

「まさか。そんなこと思うわけないだろ」

「……どうだか?まあいい、今日のところは引いてやってもいいぜよ」



そう言って私を解放した仁王くんは、柳生くんとともにコート内へ消えていく。
本当によくわからないやつだ、彼は。
一体なにを考えているのか私には全然理解できない。
………確か、仁王くんはコート上の詐欺師と呼ばれてるんだっけ?(この間丸井くんに教えてもらったの)
なんだか…ミステリアスな感じがしてぴったりだよね。



「………花島さん」

「えっ……あ、はい?」

「向こうのベンチ、行く?どうせまだ見学していくんだろう?」

「もちろんですっ!!」



お言葉に甘えて、練習風景が見渡せるベンチまで連れていってもらう。
ここは確か、いつも幸村くんが座ってる場所だ。
きゃああ、まさかまさかそんなところに座らせてもらえるなんて…!(どうしようドキドキが止まらないんですけど!!)
そして、私が座った後に幸村くんもとなりに座る。
周りを見れば、同じ風紀委員の真田くんが切原くんを凄い形相で叱っていて。(恐いなあ)
それを丸井くんと桑原くんが眺めていた。
あと……………あそこの人は誰なのかな?(目が細い………)
多分、私がこのレギュラーの中で面識がないのはあの人だけだ。
……よし、あとで誰かに聞いておこう。



「さっきは仁王が迷惑をかけてすまなかったね」

「あ、いや、別に幸村くんが謝らなくても!」

「はあ、あいつには後でグラウンド100周させなくちゃだな…」

「え、」

「ふふ、これは罰だから気にしないで」

「……倒れたりしない?」

「さあ?まあ倒れたりしてもほっておけばいいさ」



きらきらした笑顔をこちらに向けてくる幸村くん。
言っている言葉が表情とあまり合ってないけれど、そんな矛盾しているところも彼の素敵な魅力だと思う…!(でも前にそれを丸井くんに言ったら、お前頭おかしいんじゃね?とか言われた)



「……………あ、じゃあ俺、練習があるから行くよ」

「うんっ!!いってらっしゃい、ずっと見てるからねっ!」

「花島さんってばストーカーじゃあるまいし。そろそろ程々にという言葉を学ぼうか」


「それならもう知ってるよ、漢字も書けるしね!」

「へえ、そうかい?」

「えへへへへーっ」

「あはは、別に褒めてないのに」



所々、幸村くんの言葉が胸に刺さるのは気のせいだろうか。
うん、絶対気のせいだよね。
あれだよ、きっとこれは…………………………愛のムチ!(という名の照れ隠し!)

…………だったらいいなあ。





2人の取り合い

(届きそうで届かない、そんな関係)





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