「えーと、つまり………あなたは、黒魔術を練習してたんだけど失敗して、私の家に飛ばされた…と?」

「そうだね」



そうだね…ってオイ!!
もっと焦ったりとかしないの!?

………あれから、私はなぜかこの知らない男の子にお茶を出していた。(無理矢理命令された)
なんでこの人、こんなに落ち着いているんだろう。
それに、黒魔術って一体なに?
本やアニメの中でしか聞いたことないよ……!

でも、一応は不審者じゃないらしい。
よかった……………



「はあ………この俺が失敗するなんて初めてだよ」

「……そうなんですか」

「それに、よくわからないところにトリップしちゃったみたいだし」

「え?今なんて?」

「だから、トリップだってば」

「え、えええええー!!」



トリップって、うそ、本当に!?
そんなことってありえるの…!?



「こうして実際に起こってるんだから、ありえるんだろうね」

「っ!!い、今、私喋ってないんだけど…!」

「ふふ。俺に不可能はない」



ああ、なんて恐ろしいことを言い出すんだこの人は。



「これからよろしく」

「え?」

「いきなり来ちゃって、住むところも服も食べ物もないし。だからここにいてもいいよね?」

「はあああ!!?待って、そんな急に……」

「ふーん、俺に死ねっていうんだ」

「ちがっ……!!」



誰もそんなこと言ってねええええ!!



「無理矢理、言うこと聞くようにしてもいいんだよ?」

「きゃ…っ」



ドサリ、いきなりソファーに倒される。
ぶつかる衝撃にとっさに目を閉じたら、意外にも痛みはあまり襲ってこなかった。

そして、目を開けるとそこには―――――


上から見下ろしている、彼が。
腕がしっかりと固定されていて、動くことすら出来なかった。

表情が、怖い。



「ぎゃー!!なっ、なにを…!」

「さて、なんだろうね。想像できる?」

「やだ!!離して!」

「じゃあ住まわせて」

「…っ、わ、わかったから!住んでもいい、からっ」

「あ、ほんと?」



あっさりと私の上から退く男の子。
さっきの恐ろしい表情じゃなく、にこやかに笑っていた。
心なしか、周りにお花が飛んでいるように見える。
………なんだか逆に怖い。(そう思うのは気のせいですか?)



「俺は幸村精市。精市でいいよ。きみは?」

「中村ソラ……」

「そう、ソラね。じゃあよろしく!」



………なんかよくわからないうちに、家族が増えました。




新しい家族





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