「あ、わたがし買う!」
すっかり空が暗くなってきた頃。
人が溢れているこのお祭り会場で、私はいろいろなものを食べ歩いていた。
「まだ食べるの!?さっき焼きイカとたい焼き食べたばっかりだろ!」
「まだりんごあめとからあげとチョコバナナとー………」
「はあ…そんなことしてるから太るんだ」
「失礼ね!だってお祭りなんて久しぶりなんだもん!」
「………ふっ」
うわああああ、見下した顔された……!!!!
いちいちムカつくことするなあ!こいつは!!
「あ、花火が始まったみたいだよ」
「えっ、ちょっ、引っ張らないでよ!」
「問答無用」
「まだ買ってないのにいいいいいっ」
そして私は無理矢理手を引かれていった。
花火がよく見えそうな場所まで歩き続けて、ようやく手を離される。
不満げに空を見上げれば、色とりどりの花火が次々と打ち上げられていた。
……久しぶりに見たけれど、綺麗…
「…………」
「なに、買えなかったくらいでまだ怒ってるの?帰りに買えばいいじゃないか」
「……帰りは込むじゃん」
「………」
「……ぎゃあ!」
「そのふくれた顔、どうにかしなよ」
いきなり頬を引っ張られて、女の子らしからぬ声を出してしまった私。
ぐいぐい、力任せに引っ張られて目に涙が浮かんだ。
しばらくしてやっと頬から手が離されたかと思えば、
「っ、いったあああ!!!」
「ふふ」
でこぴんをお見舞いされる。
今日は踏んだり蹴ったりだ。
「いっ、今の絶対本気だったよね!?」
「黙って」
「え?………っ!」
それはふいうち、だった。
また突然に腕を引っ張られて引き寄せられたかと思えば、ぎゅう、抱きしめられる。
ぽそり、耳元で囁いた。
「俺、明日帰るよ」
頭の中が真っ白になった。
幸せは続かない
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