そして次の日、私たちは……………家の近くにあるテニスコートにいた。

ネットの向こうにいる精市を見据える。
手に持っているのは私が貸してあげたラケット。
ぽーんぽーんぽーん、ボールを地面に叩きつける音がした。



「なんで今日はスコートじゃないの?」

「わざわざ公式の格好をする必要ないでしょ。ジャージで十分。それにスコートは短くて恥ずかしいから苦手なの」

「ふうん………いい眺めだったのに、なっ」

「ひゃあっ!」



ひゅんっ、精市の打つサーブが通り抜ける。
私は何も出来ずにただ立っていた。

は、速い……っ!
なにこれ無理無理無理無理!!!
私に男子の球が打ち返せるわけないじゃん!!



「15−0」

「いやいやいや!!無理だよ!精市の球恐い!」

「まあ頑張って」

「いや無理だから!!……ってオイ、言ってるそばから打とうとしないでよ!」

「これでも少しは手抜いてるんだ、よっ」



ひゅんっ



「ぎゃああああああ!」

「うるさいなあ、逃げてばっかりじゃ試合にならないよ」

「だ、だって……っ」

「このまま何もせず負けるつもり?」

「……っ、やってやろうじゃないの…!!」

「ふふ、そうこなくちゃ」



精市の挑発に乗るつもりはなかったけれど、でも流石に一球も返せずに負けるのは情けないよね。
たとえ無謀な試合だとしても、少しくらいあがいてみよう。

………そう、思った。





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「はあ、……は…っ」

「お疲れ」



ベンチで息を整えていたら、すっと差し出された缶ジュース。
無言で受け取って、頬を冷やした。

…さっきの試合、結果は結局私のボロ負けだった。
まさか一点も取れないなんて……
なんとか打ち返せるようになったものの、やっぱりきつい。
打球は速いし重いし、必要以上に左右に動かされるし。
ていうか、あいつ私が疲れていくのを見てめちゃくちゃ面白がってた!!(つくづく最低な男だな!)

はあ……
男子との差がこれほどなんて……



「ほら、2試合目いくよ」

「えっ、もう!!?」

「次はもっと手加減してあげるから大丈夫。このままだとまた俺がストレートで勝っちゃいそうだしね」

「………ううっ、でも疲れた…」

「ふふっ、俺はソラが立てなくなるまで左右に動かしてあげてもいいんだよ?」

「ひいいっ」



やっぱり悪魔だ!!!!




ボロ負けの連続





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