「結構買っちゃったなあ……」

「無駄遣いだね」

「うるさい」



部活の帰り。
私たちはスーパーに寄って夕飯の為の買い物をしていた。
自動ドアが開いて、外に出る。
もわもわした暑さが私たちを襲った。



「あっつー……」

「夏だから当たり前」

「……さっきからなんなの?もしかしてまだ根に持ってる?」

「焼き魚って言ったくせに」

「ごめんごめん!だってお刺身が美味しそうだったんだもん」



………実は。
さっきから精市がいつになく毒舌なのは、夕飯を焼き魚からお刺身へと変更したからだ。
でももちろん魚も買ったよ?
明日の朝用にだけど。



「明日の朝はちゃんと焼いてあげるから機嫌直してよ」

「………はあ」



溜め息!!?
そんなに焼き魚食べたかったの!!?



「別にもう気にしてないけどさ。お刺身も美味しそうだし」

「それは良かったけど……」



てくてく、家までの道のりを歩く。
すれ違う人がみんな精市の方を振り返るものだから、彼のかっこよさを改めて思い知った。

………正直、あんまりいい気分じゃない。



「あー、あの子超イケメン!」

「ほんとだ!」

「隣にいる女の子、彼女かなあ」

「えー、ショック!!私たちの方が絶対可愛いよー」

「こっち向いた!」

「てか笑ったよ!?かっこいーっ」



私たちにも聞こえるような大きさで喋るお姉さんたち。
なんなの、精市に微笑まれたくらいで騒いじゃって……!

…………また嫉妬?
本当に私、醜い……

お姉さんたちが消えてからも、私の中のもやもやは消えなかった。


ちらり、精市の方を見る。
すると彼の方もこっちを見ていたようで、ばっちり目が合った。
その瞬間、にやり、彼の口角があがる。



「本当にソラは分かりやすいな」

「…………なにそれ」

「ふふっ、さあね」

「むかつくーっ」

「はいはい。………あ」



いきなり立ち止まる精市に、私も動きを止めた。
どうやら電柱に貼ってある紙を見ているらしい。



「……ああ、夏祭りのお知らせのこと?」

「そうみたいだね」

「毎年8月の末にやるんだよね。小さい頃は行ってたけど、最近は行ってないなあ」

「ふうん……じゃあ今年行ってみようよ」

「ええっ?……確かにこの日は部活ないけど…」

「拒否権無し。はい決定」

「なにそれっ!」



4日後かあ………

まあいいか、久しぶりだし。




お刺身、嫉妬、夏祭り





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