「誰、この人」
「男子テニス部の吉田くん…」
「ふうん」
「で、えーと、こっちが幸村精市」
「よろしく」
「………よろしく」
精市の登場により、雰囲気が重くなったと感じるのは何故だろうか。
………いや多分、こいつが吉田くんを睨んでるからだ。
なにこの殺伐とした雰囲気!
精市もその冷ややかな視線を送るの止めなよ!
めちゃくちゃ感じ悪いからっ!
そして、遠くから吉田くんを呼ぶ声がして、彼は去ってしまった。
「精市、態度悪いよ。冷たすぎ」
「……アイツ、絶対ソラに気があるよ」
「はあ?」
「気付けよ。あんなに見え見えなのに」
「なに言ってんの、ありえないから」
「…………この馬鹿」
「はいはい」
「呪ってやる」
「ええっ!?私を!?」
やめてよ!
黒魔術がどーのこーの言っていただけに、本当にやりそうだから恐いよ!
「ほら、もう戻るよ。休憩時間終わっちゃう」
「……うん」
「機嫌悪っ」
「誰のせい?」
「知るか。どうでもいいけど呪うのだけは勘弁してね」
「……ちっ…」
こいつは子供か。
子供なのか。
「はあ……よし、じゃあ今日の夕飯は焼き魚にしよう!」
「なに?食べ物で釣るつもり?」
「だって好きでしょ?」
「……まあ好きだけど」
「じゃあ決まり!帰りに買い物行こう」
ぱちん、と両手を合わせて、それと共に私は歩き出した。
もちろん精市も隣に並ぶ。
まだ不機嫌そうな顔してるけれど、さっきよりはまだマシになったようだ。
焼き魚作戦、成功かな?
「そういえば次は試合だっけ」
「うん、そう」
「今日はボロ負けすると思うよ」
「縁起悪いこと言わないでよ!」
「ふふっ」
そして、今日の試合は見事にボロ負けでした。
いつもは勝ってるはずの相手にまで負けるなんて………
今日はたまたま調子悪かったのかなあ…
それとも、アイツには予知能力でも備わっているのだろうか。
……いやそれは流石にないか。
焼き魚作戦
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