「しんっっっじられない!!!!」

「ハイハイ、悪かったってば」

「気持ちが籠もってない」

「………ばれた?」



お風呂から出た後、私は精市の作った夕飯を食べていた。
もぐもぐもぐ、いつもより多く噛んでみるけれど気は紛れない。
頭の中に浮かんでくるのは、やっぱりさっきのこと。

だっておかしいじゃん!
仮にも女の子が入ってるお風呂のドアを開けるとか、普通ならしないよ!

…………いや、こいつは普通じゃなかった。
もはや出会い方から普通じゃなかったもん。
いきなりトリップしたとかなんとか言ってたし、黒魔術がどうのこうの言ってたし……こんな変な奴に常識が通じるわけがない。



「…わざとでしょ」

「まさか。ソラの幼稚な体なんて見て何になるのさ」

「むかつく…!そして一言多い!」

「つい開けちゃったのは悪かったと思うけど、別にそこまで怒らなくても…」

「普通怒るよ!」

「何も見てないのに」

「そういう問題じゃないの」

「一緒に寝た仲だろ?」

「ぶっ」



爆弾発言に思わず吹き出す。
やだ私ってばお行儀悪い…

ってそうじゃなくて!



「か、勘違いされそうなこと言わないでよ!」

「周りに誰もいないんだから気にしなくても…」

「だからそういう問題じゃないのっ!」



まったく、こいつにはデリカシーっていうものが無いのかしら。
ああ、人のお風呂シーンを覗くような人だもんね、あるわけないか。

何も見てないとは言ってるけど、いくら乳白色だったからって少しは透けてたはずだし………うわあああん恥ずかしいよ!



「はあ、わざと覗いたわけじゃないって何回言ったら分かるんだよ」

「っ、心読んだ!?」

「え?やだなあ言いがかりだよ。ふふっ」

「やっぱりこいつ最低ーっ!!!」



悪びれもせずにこにこ笑う彼を見て、私は両手で顔を隠した。
隠してもどうにもならないってことは充分わかっているけれど。



「もうやだお嫁に行けないいいいいいっ」

「大丈夫、元からお嫁に行けるような顔じゃないから」

「うっさい!!」



まったく、こいつって奴は!!!




彼手作りの夕食





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