「ひ、っあ、やめ……てぇっ!」

「苦しいの?」

「わ、わわ、わかって、る、くせに……ひうっ」



涙ながらに懇願する私は、今、精市の手によって苦しみを味わっていた。
体を行き来するその手は、確実に私の嫌な所をピンポイントで攻めてきて。
耐えがたいくすぐったさに、涙を零す。


………そう、私はいま体中をくすぐられていた。



「いひっ、ひ、ひゃあ!うう、やだあ…っ!!」

「えろい声出すのやめてよ。近所に聞こえたらどうするのさ」

「だっ、たら…やめ…ひぃあっ」

「ほらまた……」



なんでこんなことされてるんだろう。

そんなことを頭で冷静に考えつつ、体はベッドの上でじたばたと暴れる。
でもやっぱり私も女の子だし、男の子の力には適わなかった。
無駄な抵抗だと分かっているのだけれど、やっぱりくすぐったくて暴れてしまう。



「も…だめ……っ」

「ふふ、なんだか無理矢理犯してるみたいでゾクゾクする」

「はあ…っ…あ、ああ、」



冗談じゃない!
無理矢理とか最低だし、それにゾクゾクするってなによ…!

つまり精市にはそういう性癖があったということですか。
……うすうす分かっていたけれど。
でも意地悪ってレベルじゃないよコレ。
むしろドS!鬼畜大魔王!!



「そろそろやめてほしいかい?」

「あたり、まえ…うっ」

「じゃあきちんとお願いすることだね」

「はあ…!?」

「あ、今ふざけんなこの野郎とか思っただろ」

「思って、な……ひいいっ!あ、あうっ」

「お願いですやめて下さい精市さま、って言ったらやめてあげる」

「ふ、ざけ、ん…な……んっ」

「ふーん。じゃあこのままずっと苦しんだら?」

「おお、お、お願いですっ、やめ…あっ、くださ、精市さまあ…っ」

「うまく聞こえないなあ」

「っ!!」



なにこいつ最低だ。
一体何様のつもり!?
こっちがあんな恥ずかしい台詞を言ってやったっていうのに…!!
あああ恥ずかしい、顔も体も熱いよ!



「でもまあ、もういいか」

「え、」



いきなりぴたっと止まった彼の手に、思わず拍子抜けする。
精市が…珍しく大人しく引き下がった…!!?
あのドS鬼畜大魔王が!?
なにこれ、明日雪でも降るんじゃないの!?

笑いすぎて頬に伝った涙をパジャマで拭くと、私はベッドから降りた。(正しくは、精市から距離をおいた)
きつく彼を睨みつける。



「う、うう…っ、」

「ふふ、泣くほど苦しかった?」

「私はくすぐったいの苦手なの!」

「それは良いことを聞いたな」



にーっこり、悪魔な笑顔をこちらに向けてくる。
ああこいつ、全然反省してない…(目眩がしてきた)




泣かされる





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