不思議な夢を見た。
精市の腕の中で、私が一晩中泣きあかしている夢。

お父さんもいないのに、この間お母さんまで死んでしまって。
私にはもう、頼れる人なんていない。
心のより所が、ない。
夜が深まるにつれてそのことを思い出してしまって、私はいつも泣いていた。

ある夜のこと、精市が私を強引に連れ出してくれて。
いっぱい話を聞いてくれて、いっぱい泣かせてくれた。



「俺が側に、いてあげるから」



その言葉に、私がどれだけ安心したか。
私の中で、もう精市は大きな存在になっているらしい。


そんな、夢だった。



「ん……」



周りが明るくなっても目覚まし時計が鳴らないことに多少不信感を覚えつつ、薄く目を開ける。
寝起きでぼんやりとした視界でも、目の前にいた何かには気づけた。

なぜか、精市が目の前にいる。



「えええっ」

「ん……なんだようるさいな」

「ご、ごめん…」



夢じゃ、なかった!
どどどどうしよう!
夢じゃなかったよ!

昨夜は何もしてない…はず。
ただ黙ってぎゅってしてくれて、私はずっと泣いていた。
それだけ。

出来事を再確認したあと、急に安心感に襲われる。
未だに抱きついたままの彼が、愛おしく感じた。



「今何時?」

「えと………9時…」

「ふああ、もうそんな時間か」

「起きる?」

「…いや、あと少しだけ」

「じゃあ私はご飯作ってくるよ、」

「いい」



そう言って、またぎゅっとされる。
私は精市の胸辺りに顔を寄せて、目を閉じた。

………なんか恥ずかしい…!
すごく安心するけど、でも、ドキドキする。



「昨日はありがと」

「……」

「精市って意外に優しいよね」

「…意外にってなに」

「んー、いつも減らず口ばかり叩くし、意地悪だし、」

「ふーん、生意気なことばかり言う口はこれか」

「い、いひゃ、ひ!!」

「意地悪で悪かったね」



にっこり、とてつもなく恐ろしい笑顔で私の両頬をつねる彼。
ものすごく痛かったけど、多分、これは彼なりの照れ隠しなんだと思う。(でも少しは怒ってるっぽい)



「いひゃいほうっ」

「なに言ってるのか全然分からない」

「ひっ、……痛いよ!ひりひりするんだけど!最低!鬼畜!」

「せっかく離してやったっていうのにまだ懲りないのかあ、ソラは。覚悟はいい?もちろんいいよな」

「………え?」

「せいぜい苦しめばいいさ。泣き叫ぶくらいに…ね」



ふふっ。

微笑んだアイツが、悪魔に見えた。



「ひっ、ん、あ、いや、いやあああああああっ!!!」




ベッドの上で戯れる





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