もう、こっちへ来て何日たったろうか。



「……なにその極悪な顔」

「それ毎朝聞いてる」



それは朝のことだった。
イライラしながらイスに座る。
ちらり、カレンダーに目を向ければ、………ああ、もう一週間くらいになるのか。(相変わらず時がたつのは早い)

外は良い天気だし、目の前にはできたての朝ご飯が奇麗に並べてあって、特にこれといって俺を苛立たせる要因は見あたらなかった。
元々朝はテンションが低いせいもあるけれど、それでも最近の俺の機嫌はすこぶる悪い。

いわゆる睡眠不足、だ。

その原因の源であるソラは、悠長に目の前でぱくりとご飯を口に運んでいる。


ああまったく、こっちの気も知らないで………


ここ一週間、ほぼ毎日ソラは決まって夜に泣いていた。
多分それは俺が来る前から続いていたのだろう、恐らく………彼女の母親が亡くなってから。
昼間は明るく見せているけれど、やっぱり堪えているのだ。




「いただきます、」



ソラに続いて自分も食べ始める。
何食わぬ顔で箸を進めているけれど、彼女の目が腫れていることは一目瞭然で、……あれで隠し切れているとでも思っているのだろうか?



「そういえばね」

「ん?」

「今日は部活があるから帰りは6時頃になるよ」

「何時から?」

「えと……10時から」

「……へえ」



部活、か。
俺もいい加減テニスの練習しないと腕が鈍りそうだ。

そういえば今頃、あいつらは一体どうしているのだろうか。
ふふ、もしかして俺がいなくなって心配でもしてるかな?
柳あたりなら、もしかしたら感づいているかもしれないし。



「ちなみに何部なんだい?」

「テニス部、だけど」

「………嘘だろ?」

「なにその『お前がテニス部?冗談よせよ』とでも言いたそうな顔は!!」

「そんなこと思ってないけど」

「棒読みで言われても説得力ないです」

「…はあ、まったく被害妄想激しいな」

「な、んだと…!!!?」



眉間にシワを寄せてあからさまに睨んでくるソラ。
テニス部、と聞いて少し嬉しくなったのは秘密だけれど。
だってほら、なんか勘違いしてるし、ね。あいつ。



「奇遇だな、俺もテニス部だよ」

「え……なんでそんな自信満々に言うの」

「ふふ。強いよ、俺は」

「……まじで?」

「俺が嘘つくと思う?」



にっこり、これ以上はないってくらい微笑んでみる。
そうしたら彼女は震え上がった。

これだけ元気なら大丈夫だろう。

問題は、夜だ。




キミの部活





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