「はやくしてよ、お腹すいたんだけど」

「うるさいな、今作ってるでしょ!」



ついさっきから始まった私たちの同居生活。
ひょんなことから私の家に転がりこんできた男の子、幸村精市は、今日が初対面だっていうのにソファーでめちゃくちゃくつろいでいた。
……偉そうにしてるところがかなりムカつく。

そして今、私はお腹がすいたと言い出した精市にお昼ご飯を作っていた。(さっき作ろうとしていた、そうめんだけど)



「そういえば、ソラの親は?」

「……お父さんは、私が小さい頃に亡くなったって。お母さんは、一週間前に事故で」

「…………そう」



口に出してみると、なんかキツいかもしれない。
両方いないんだってことが、重く心にのしかかる。



「すまない」

「え?」

「まさか、亡くなったとは思わなくて」

「あ、いや、いいよ、うん。精市が知らないのは当たり前だし」



そうだ、別に精市のせいじゃない。
だから彼を責める必要なんてないのだ。



「ほ、ほら、できたよ」


暗くなった雰囲気を少しでも変えたくて、ちょうど出来たばっかりのそうめんをテーブルへと運ぶ。
麺つゆを器に注いであげれば、彼は黙って食べ出した。

……男の子と同棲するって知ったら、天国のお父さんやお母さんはなんて言うだろう?



「どのくらい、ここにいるつもり?」

「1ヶ月くらい」

「ふーん………じゃあ、いろいろと買わないといけないね」

「ああ、うん」

「今日買い物に行くとき、ついでに買っちゃおうか」

「そうだね……って言っても、俺財布持ってないけど」

「うん、予想してた」



突然こっちに飛ばされてきた人が、財布なんて持ってるわけ無いもん。(常備してる人ならともかく)

何着か服を買って、足りない分はお父さんの若い頃の服を借りればいいよね。
たしかお母さんがクローゼットにしまっておいたはず。

なにかがあったときのためにってお母さんが貯金しておいてくれたから、お金には困らないし。
それに、親戚たちからも成人するまでは月10万を援助してくれるって言ってたし。

だから、別に1人増えたって金銭的には痛くもかゆくもないのだ。



「大丈夫、お金の心配はいらないから」

「……なんだかヒモみたいで嫌な気分だな」

「ふふん」

「うわ、その顔ムカつく」



ふてくされながら、精市が言う。
私は優越感にひたった顔で彼を見返していた。




ご飯にしましょう





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