昨日、ようやく好きと気付いたものの、それをどうやって伝えればいいんだろう?
手紙?メール?
やっぱり………直接?
「はぁ………」
「どうしたのー?」
昼休み、中庭の木の下で一人溜息をついていたところに、ちょうどよくやってくる外村。
なんでそんなにタイミングいいの…
「別に、なんでもない」
「……そう?」
まさか、どうやって告白するか悩んでた、なんて本人に言えるわけないじゃん。
……他の奴にも言えないけど。
「なんだか最近、リョーマ変だね」
「……俺もそう思う」
「あれ?気付いてるの?」
「まぁね。でももう理由は分かったから」
「えっ!なになに!?」
「 ひ み つ 」
「っ!ケチー!」
そう言われたところで、あることに気付き後悔する。
(……今のタイミングで言っちゃえばよかった…)
「教えてよリョーマーっ」
「そんなに知りたい?」
「だってなんか気になるんだもん!」
「……いいよ、じゃあ教えてあげる」
「ほんと!?」
分かりやすすぎるほど嬉しそうな表情に、思わず口元が緩む。
本当に素直で可愛い反応だな、なんて柄にもなく思ってしまった。
だって、あんなに目をキラキラさせてる。
「で、なになにっ?」
「俺、好きな子できたんだよね」
「…………え…っ」
突然、彼女の目が曇りだす。
心なしか表情も曇った気がした。
そして、俯きながら呟く。
「そ、そっか。なんだ、そうだったんだ」
「…外村?」
「あ、はは……私、応援するよ」
「なに言ってんの?」
「精一杯っ、応援する、から……っ」
「外村っ!!!」
「……っ!!」
いきなり大きな声を出した俺にびっくりしたのか、目を見開ている彼女に、少し呆れながらも話を続けた。
「人の話を最後まで聞かないの、アンタの悪い癖」
「ごっ、ごめっ……」
「……ねぇ、その好きな子って誰だと思う?」
「え…」
多分当てられないだろうな。
「えと……竜崎、さん?」
「ハズレ」
「えっ、じゃ、じゃあ小坂田さん…?」
「それもハズレ」
「そんな、私にはわからないよ……」
案の定、早くもわからないと言い出した外村に、少しくらいヒントをあげてやってもいいかな、と思い始めた。
「俺がいつも一緒にいる奴。………これで分かる?」
「一緒に…?」
「そう、考えればすぐに分かるから」
「うーん……」
そしてあれから約10分。
未だに外村は考え込んでいた。
はぁ………ヒントあげても分からないって、それ鈍感すぎじゃない?
「あーもー!分からないよー!」
「ねぇ、アンタが考えてる隙に昼休み終わるんだけど」
「ええっ!?あっ、ちょっ、待ってよ昼休み!」
「………昼休みに向かって話してどうすんの」
ていうか本当に終わる。
休み時間あと5分で終了なんだけど。
「やぁぁぁ!理解不能ー!」
「あー…………もう自分で言った方が早いよ」
本当は本人に気付かせようと思ったけど無理だ。
まさか外村がこんなに鈍いとは…ね。
「自分で、ってことはリョーマから教えてくれるの?」
「ん、」
「だ、だれ……?」
そう聞かれてから、彼女の方を指差す。
外村は一瞬きょとんとして、その直後固まった。
「えっ、わ、わわわ、わた、し?」
こくり頷くと、相手の顔が明らかに染まった。
その真っ赤な表情さえも可愛くてたまらない。
「う、うそ?」
「うそじゃない」
「だって、信じられな……っ」
「じゃあ信じさせてあげる」
そう言って、顔を近づける。
予想通り固まったままでぴくりとも動かなかった。
ちゅっ、と軽くリップ音を立てたのはわざと。
そして、頬にキスしたのもわざと。
「リョ、リョーマ…?」
「これで信じる?」
「えっ、あ、はいっ!」
ねぇ、これで俺の気持ち伝えたよ。
アンタの気持ちはどうなの?
………教えて、外村…
「あ……あの、ね、リョーマ」
「なに?」
「わ、私もね、リョーマが――――――」
好きって素直に伝えたい
(なんだ、結局は両思いだったんじゃん)
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