「リョーマ―――!」
遠くから届く声。
それ……というかそいつは、すぐに近くへ寄ってきた。
「なに?」
「次の授業、移動だよ?早く行こっ」
こうしていつも纏わり付いて来る外村あや。
少しうざいときもあるけど……
そーゆーところが微妙に可愛い、とか思ってしまう俺はどこか変みたいだ。
部活やってて、女の子が纏わり付いてくることはよくある。
たとえば………竜崎たちとか?
でも、今まで別に気にしてこなかった。
…………でも。
外村はなんか違う気がする。
「ほらほら!早くっ」
「うるさい……」
「う、うるさい!?ひどいー!」
「ひどくない」
「ひどい!」
「うるさいよ」
「うるさくない!」
「…………」
なにこのやりとり。
エンドレス?
エンドレスでやれって?
…………まぁ外村とだったら飽きなくていいだろうけどね。
「外村」
「なによぅ―――…」
「…………その拗ねたような顔やめなよ。不細工だから」
「っ!!ひどいー!」
「ひどくないし」
ただ、拗ねた顔より笑った顔のほうが可愛い、そう思っただけ。
……あれ、なんでこんなこと考えて………やっぱり俺おかしい?
「………というより………早くしないと授業遅れるけど」
そう言ったら、彼女は慌てて俺の腕を引っ張り出す。
「ああもうっ!早く早く!!」
「ちょっ、外村!」
触れられた手に、少しだけ頬を染めながら、俺はただただ外村に手を引っ張られて連れていかれた。
「もうっ、リョーマのバカ。怒られちゃったじゃん!」
「……そんなこと俺に言われても」
結局遅刻してしまった俺達は、先生に少し怒られつつも隣り合う席に座った。
「バカバカー」
「アンタのほうがバカでしょ。赤点ばっか」
「う……っ」
授業中でも構わずに話しかけてくる外村は、未だに拗ねている。
そんなに嫌だったんなら俺に構わず先に行っちゃえばよかったのにさ。
そんな風に一緒にいたがるから堀尾にだってからかわれるんだよ。
別に恋人同士、ってわけでもないのに。
「リョーマの意地悪……私が勉強できないの知ってるくせに」
「だから?」
「〜〜〜〜っ」
悔しそうに視線を向けてくる外村。
……あ、なんかこの顔好きかもしれない。
「ふんっ、リョーマなんか嫌いになっちゃうからね」
「……勝手にすれば…」
「……もう、ほんとに意地っ張りなんだから」
「うるさいよ」
勝手にすればと強がってはみたものの、やっぱり外村に嫌いになられるのは少し………嫌かもしれない。
……でも、この気持ちは、
愛じゃない、恋じゃない
(だって外村はただの友達、だし)
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