なんなんだろう、昨日から感じるこの気持ちは。
頭から、赤也くんのことが離れない。

なんで、どうして?

きらきらして見えた彼の笑顔。
それがずっと頭から離れない。



「はあ………」

「どうした?」

「あ、ゆうちゃん……」



休み時間、ため息をついたときに、私の前の席の子が振り返る。
ゆうちゃんは私の大切なお友達だ。
中学に入ってから、クラスがずっと一緒で……あ、ブンちゃんもずっと同じクラスなんだけどね。



「なんか悩みでもあるの?」

「………別に、なんでもないんだけど、ね?でも、なんか……変なの」

「変って?」

「…昨日の夜、ブンちゃんとコンビニに行ったの」

「相変わらず仲良しねえ、あんたたち」

「それは幼なじみだし…………でね、そこのコンビニで男の子に会ったんだけど」

「ふーん…で?」

「そ……その子がすごく人懐っこくて、ええと……」

「………」

「だから、あの………」



ああ、私はなにを言おうとしてるんだろう。



「ま、まさかとは思うけどひな、そいつに一目惚れしたとか言わないよね?」

「…………!」



一目惚れと言われて、心なしか頬がほんの少し熱くなった気がした。

一目惚れって、私が彼を好きになったってこと?
はじめて会ったのに?
私が赤也くんを、好き…?



「ど、どうしよう私……!」

「………本当に、好きなの?」

「…う、ん」



きっと…いや絶対に、好きなんだ。
だって、もう赤也くんのことしか考えられなくなってる。

この短期間で。
いつのまにか、赤也くんに魅了されてたみたい。



「そっか、ひなにもとうとう好きな人が………で、誰なのよそいつ」

「ブンちゃんの…後輩」

「ってことは年下!?」

「う、うん」

「名前は?」

「えっと、切原赤也くん……」

「ええええええ!!!」



がたん、と椅子から飛び起きる彼女。
おどろくのも無理はない、だってゆうちゃんはテニス部のマネージャーなのだから。
だから、赤也くんのこともよく知っているはずだ。

そして、椅子に座り直して、ゆうちゃんは信じられなさそうに私を眺めた。



「あの赤也か………」

「駄目かなあ?」

「いやいや、駄目とかそういうのはないけど。せっかくひなが好きになったんだしね」

「………」

「それに、赤也に恋人がいるなんて噂、聞いたことないし」

「ほんと?」

「うん」



それを聞いてほっとする。

よかった……!
赤也くん、彼女いないんだ。
なら、もしかしたら私にもチャンスはあるかな?
私みたいな女でも彼に近づくことができるかな?

また、会いたい。
また、話したい。
もっともっと、赤也くんを知りたい。


これが、今のこの気持ちが、私が恋してるって証拠だったりするのかな?



「よーし!」

「え?」

「こうなったら、私が協力してあげる!親友のためだしね!」

「わあ…!ありがとう!」

「ふっふっふっ、感謝しなさいよ?私が赤也のいる部のマネージャーで」

「うん!」



私は幸せ者なのかもしれないね。
こんなにも素敵な親友に恵まれていて。

ほんとにありがとう、ゆうちゃん。
とりあえず、初恋成就に向けてがんばってみます。







(今から私に出来ることってなんだろう…?)






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