はあ……今日も1日妙技が冴えなかった。
天才の俺が聞いてあきれるぜぃ。
まさか、色恋沙汰でこんなにも心が乱れるなんて。
………部活終了後、俺はみんなと共に制服に着替えていた。
汗で湿ったウェアを脱ぐ。
上半身裸のまま、俺は深く息を吐いた。
「あれ?溜め息っスか?」
「…………」
「まさかのスルー!?」
「………なんだ赤也かよ。うぜー、向こう行けー」
「ひっでー!!!」
隣でぎゃあぎゃあ騒いでる馬鹿はさておき。
俺は制汗剤を体に吹き付けると、制服のシャツを羽織った。
「なんか今日の丸井先輩機嫌悪い?」
「んなことねーって。お前の勘違いだろい」
「ならいいんスけどね。あ、それ貸してください」
「ほらよ」
制汗剤を軽く投げてやれば、あいつは見事にキャッチ。
意地悪して強く投げてやればよかったと今更ながら後悔した。
「そういえば、」
「あ?」
「八神先輩って……その、彼氏とかいるんスか?」
「………は?」
なんでそれをわざわざ俺に聞くんだ。
傷心中の、この俺に!なんで!
「なにお前、ひなのこと好きなわけ?」
「だって先輩ちっさくて可愛いじゃないスか。守ってあげたくなるような子、俺好きなんです」
「………へえ」
まじかよ。
もしかして………いや、もしかしなくともあいつらって両想い……?
うそだろ、おい。
まさかこんなに早く……っ!
………俺はここで、正直に言うべきなのだろうか。
自分の為だと思うなら、今すぐ赤也にひなを諦めさせればいい。
ひなの為だと思うなら、俺は正直に話せばいい。
自分も大事だし、ひなもすっごく大事。
……だったらどうすりゃいいんだよ!
「あいつは彼氏、いないぜ」
「まじっスか!」
だったら狙っちゃおうかなー、なんてのうてんきに笑う赤也を見て、勝手にしろぃと呟いた。
ひなを諦めさせるなんてこと、俺にできるわけないだろぃ。
赤也だって一応、一応だけど、俺の可愛い後輩だ。
だからそんな、ひどいことできるわけない。
それにそんなことをすればひなとの約束を破ることにもなる。
あの日、俺はあいつの恋を応援してやるって……言ったのだから。
わかった、わかったよ神様。
俺に諦めろって言ってるんだろい?
そりゃそうだよな、俺が諦めればあいつらは幸せになれるんだもん。
だったらここで言うべき言葉は、
「ひなだってお前に好かれたら満更でもないと思うけどな」
……ああ、俺ってほんと不憫。
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(あいつらは両想いなんだ)
(だから俺は、今度こそ諦めなくちゃいけない)
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