時間というものはあっという間にすぎる………
それを改めて実感しました。
さっきまで休み時間だったのに、もう放課後だなんて。
ドキ、ドキ、ドキ。
これからまた赤也くんの元へ行くのだと思うと、やっぱり私の心臓はうるさく高鳴る。
どうしたらいいの?この気持ち……
「どうかしたか?八神」
「え、あ、ううん、なんでもない、よ」
てくてくと地面を歩く私の隣には、雅治くんがいる。
今まで私は保健委員の仕事があって保健室にいた。
………でも、その仕事もいつもより早めに終わって。
テニスコートへと急ごうとしていたところに、玄関にて部活をさぼっていた雅治くんに遭遇した。
そして、あんまりさぼっちゃだめだよ、という私の言葉を分かってくれたらしく、今に至る。
「今日もコート来るんか?」
「う、うん」
「ふーん?」
にやり、と不敵に笑う雅治くんからの視線がいたい。
ううぅ……一体、なにを考えてるんだろう。
同じクラスだから当然話すこともあるし、彼は私が人見知りだということも知っている。
だからある程度は雅治くんと話すのも慣れているけれど……
でもやっぱり、少しだけ……
「で、お目当ては誰なんじゃ?」
「えっ、あ、ち、ち、ち、ち、ちがうよ!目当て、とかじゃなくて、その………えっと、」
「……赤也?」
「…っ……!!」
「(わかりやすいのう)」
かああ、と一気に顔が熱くなる。
まさかいきなり彼の名前が出てくるなんて、思いもしなかったのだ。
な、なんで分かったんだろう…?
雅治くんって…すごい、かもしれない。
「そーかそーか、最近よく来るようになったと思えば、赤也目当てだったんじゃな」
「…ぅ……な、なんでわかった、の…?」
「この前赤也と話してるとこを見たから」
「そんな…」
「まあ気にしなさんな、別に邪魔なんかせんよ」
「ほんとう?」
「ああ、」
思ってたよりもいい人みたいだ。
いつもブンちゃんをからかってたから、そんなイメージしかなかったのに。
「ありがとう、雅治くん」
「……まあ頑張れよ」
「っ、うん!」
「お、ほら噂をすれば、」
そう言われて雅治くんの見てる方に目線を合わせれば、テニスコートのフェンス付近で座り込んでる赤也くんが。
わ、わああっ、どうしよう……っ!!
まだ心の準備が出来てないのに、なんて考えていたら、ふと顔をあげた赤也くんと目があった。
私たちに気付いたらしく、明るい笑顔で手を振ってきている………かと思えば、フェンスのドアを開けて外に出た。
そのまま近付いてくる。
「じゃ、俺は部室に行くぜよ」
「え、あっ、うん」
「八神せんぱーいっ」
名前を呼ばれて、私はそろそろと近づく。
休み時間ぶりだね、なんて言えば、明るい笑顔が返ってきた。
やっぱり、赤也くんはきらきらしてる。
まぶしい、よ。
私なんかが赤也くんに恋してもいいのかな。
私なんてぱっとしなくて冴えない女の子だし、他の子みたいに明るくお話とかできないし。
でも、赤也くんは違う。
かっこいいし明るいし面白いし、なにより、一緒にいると楽しい。
「あ、あ、あの!」
「へ?」
渡すなら今しかない、そう思って、クッキーの包み紙を彼の前に差しだした。
「こここ、こ、こ、これ……っ、調理実習でつくったんだけど、ね!えっと、よかった、ら…」
「これ、くれるんスか?」
こくこく、勢いよく頷く。
するとまた、きらきらした笑顔を向けてきた赤也くん。
「サンキュー!!先輩っ!」
どきん、胸が高鳴った。
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(すきですきで仕方ないみたい)
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