「ねえ、どういうつもり?」 「……は?」 それは休み時間、教室でのんびりと読書していた時のことだった。 クラスの違う私の彼氏が、私の目の前に仁王立ちする。 ………どうやら相当ご立腹のようだ。 「ど、どうしたの?」 「今日は何日?」 「2月……15日……」 「昨日は」 「2月14日」 「何の日?」 「バレンタインデー…?」 「そうだね」 「だからなによ?」 「俺に、チョコは?」 「…………」 ああ、そういうこと! バレンタインのチョコレートが欲しいってことね。 そりゃ、用意してあるけど。 けど……さ。 精市のことだからどうせ、昨日女の子からたくさん貰ったんでしょ? ……そのことを考えるとなんかもやもやする。 嫉妬なんて醜いって分かってるよ。 でも、やっぱり…耐えられなくて。 だから私は昨日学校を休んだ。 精市が他の子から抱えきれない程のチョコを貰っている所なんて見たくないから。 まあ、そのせいで自分もバレンタインデー当日にチョコを渡すことが出来なかったのだけど。 「昨日女の子達からたくさん貰ったんでしょ。それで充分じゃないの?」 「駄目。君がくれたのじゃないとやだ」 「わがまま」 「これがわがままだって?自分の彼女からチョコもらいたいっていう男の気持ち分からないの?」 「分からない」 「……はあ…」 溜め息をつく精市をよそに、私は内心後悔していた。 ……なんで、可愛くないことを言っちゃうんだろう… 彼を困らせたいわけじゃないのに。 本当は大好きなんだよ、精市のこと。 なのに……… 「私、今年は逆チョコがいいなあ」 また、素直にチョコをあげれない。 「逆チョコね………来年ってことで」 「えー」 「用意してないし、今から買うのも面倒だし。でも昨日学校を休んだ誰かさんは用意してあるんだろうから、早く渡しなよ」 「………ないもん」 「…まったく、本当に素直じゃないな」 「あっ!」 ガサゴソ、いきなり私の鞄の中を探り出す彼に驚いて声をあげる。 すると、上の方に入れておいたのが災いしたのか、すぐに見つかってしまった。 「これは何?」 「…………友達にあげるやつ」 「へえ、こんなに凝ったラッピングのものを友達に?あれー、確か去年はもっと簡単なものをあげてなかったっけ?」 なんで覚えてんのよ! 「これ、明らかに友達へじゃないよね。もしこれが俺以外の男にあげるやつだったりしたら………返答によっては、怒るよ?」 「……っ、分かったよ!それは精市に作ったやつです!」 「ふふ、よろしい」 ぽんぽん、頭を優しく叩かれる。 子供じゃないんだから、こんなことされても嬉しくないんだからね! う、嬉しく………ないんだから! 1日遅れのバレンタイン (素直じゃない君も好きだよ、……なんてね。ふふ) 110215 |