私が、ダイゴを、好き??

いやまさか。
そんなわけがない。
だって嫌いだもん。
ダイゴのこと大大大大大嫌いだもん。

……でも、それならどうして今こんなにドキドキしているのだろう。
自分自身の事なのに、全く分からない。

私はダイゴのこと、本当に嫌いなの…?


……いえ、そんなの考えるまでもない。
私はあの日決めたんだ、ダイゴのことを嫌いになるって。

だから、嫌い。
大嫌い。
絶っっっ対に嫌いなの!!



「ダイゴなんて、大嫌いだわ」

「……置いていったこと、まだ根に持ってる?」

「…………別に」



別にだなんて強がってみたけれど、私が根に持っていることは火を見るより明らかだった。
きっと、私の周りはみんなわかってる。
でも私は意地をはることをやめられない。
……これは無神経なダイゴに対する、私の精一杯の抵抗なのだから。
ダイゴなんて、いっぱい困ってしまえばいい。
私を置いていったこと、すごく後悔すればいいんだ。



「ミサキは本当に素直じゃないな」

「…………」

「ねえ、僕のこと、好きだろ?」

「……何度も言わせないで、私はあなたがきら、っ!」



言葉が続けられなくなったのは、物理的に口を塞がれてしまったからだと数秒遅れてから理解した。
それも、ダイゴの唇によって。
時折かかる吐息がいやらしく感じて、何も考えられなくなった。
頭の中は相当なパニックだし、オーバーヒートしてしまいそうだ。

だって、どうして私、ダイゴにキスされてるの?
どう考えてもおかしい、今日のこいつはおかしすぎる!



「ん……っ」



一体何秒そうしていただろうか。
突然すぎて目を閉じる余裕がなかったというのもあるけれど、至近距離にダイゴの瞳があって、私はその間ずっと目線を逸らせないでいた。
つい惹かれてしまったというか、びっくりして体が動かなかったというか。
でも、そんなされるがままに唇を許してしまった私のことを、彼は目を細めながらじっくりと観察しているようだった。
なにもかもが見透かされているようで、こわい。

あまりにも触れている時間が長くて、もう少しで窒息死してしまうのではないと錯覚してしまう。
苦しさのあまり、どんっ、と胸を押しやれば、彼は構わず距離を詰めてきて私をきつく抱きしめた。
苦しいと抵抗するものの、まったく効いておらず、いつのまにこんなに体格差が広がったのだろうか?
昔はそれほどでもなかった気がするのに、今では腕の中にすっぽりとはいってしまう。



「せっかく久しぶりに会えたのに……」



ぽつり、耳元で呟かれる言葉。
それはとても小さなもので、聞き取るのがやっとだった。



「ちょっと、苦しいってば…っ」

「……ミサキ」

「なに?!」

「僕のこと、嫌いじゃないよね」

「え……そ、それは………」



より一層ぎゅっと腕に力が籠もって、さらに密着した状態になる。
どきどきしてる私の心臓の音が、もしかしたらダイゴにも伝わっているかもしれないと思うと、どうしようもなく恥ずかしくて泣きたくなった。

どうして、こんなときに限ってそんな淋しそうな声を出すの?

そんなの聞いたら……私……



「き、ききき、嫌いとか好きとか…関係ないでしょ!ただの幼なじみなんだから!」

「……っ」

「いいかげん放し、んっ」



もう一度唇が重なる。
あろうことかファーストキスだけでなくセカンドキスまでも奪われた……!
この年齢で初めてっていうのは恥ずかしいけれど、大切にとっておいたのに。

ああもう、最悪だ。
もっと場所とか、雰囲気とか、その他にも色々と配慮が足りない。
ルームミラー越しに見える運転手さんが顔を真っ赤にしていた。

…………それに、もっと重要なことがひとつ。
これだけはどうしても腑に落ちない。

どうして、よりによって相手が私なの?!



「こ、の……キス魔ああああっ!」

「痛っ!」





(昔はこんな奴じゃなかったのに)

私とキス魔と運転手



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