「……ごめん、なさい」

「うん、だから?」

「だ、から、ごめんなさいって何回も言ってるじゃないかあああ……!」



半泣きで土下座すること数十分。
目の前には、笑顔でソファーに座り腕を組むグリーンの姿が。
我ながら、情けない姿をしていると思う。

何故こんなことになってるかといえば、それは長い話になるけれど、まあ短く略せば、つまり、私が今日のデート(しかも久しぶりの)を忘れていたということで。
そして、グリーンは待ち合わせ場所にしていたタマムシの噴水に、何時間たっても姿を見せない私に痺れを切らして、私の住んでいるヤマブキまで飛んできたらしい。
1人暮らしをしている私にとって、安易にドアを開けるのは不用心にも程があると前々からグリーンに言われてはいたのだけれど、そんなことも忘れて笑顔で玄関を開ければ、ものすごく笑顔(あからさまにオーラがおかしかったけれど、)な彼氏様とのご対面だった。

それから私は現在進行系で土下座を繰り返している。
ていうか彼女に土下座させる彼氏ってどうよ。
まあ私が悪いんだけどね、それくらいは分かってますよ!



「ほんとに悪かったよ、私だって今日のことすごく楽しみにしてたし、でもまさか忘れるなんて思ってなくて…」

「俺もまさかお前が約束すっぽかすとは思ってなかったよ」

「う………ほ、ほら、ちゃんとこうしてカレンダーにもマークしてあるし、だから故意で忘れてたわけじゃ……」



そう言ってカレンダーを指差す。
ファンシーなイラスト付きのそれには、今日の日付に赤マーカーでハートマークが書いてあった。
……にもかかわらず、今日のデートを忘れてしまった自分を殴りたい。

待ち合わせは確か午前10時頃で、今はもう午後3時。
いくらなんでも、それじゃあグリーンが怒るのもわかる。



「埋め合わせはちゃんとする、から!」

「はあ?どうやって」

「あ…明日とか」

「明日はジム」

「じゃあ明後日!」

「ジム」

「明明後日!」

「ジム」

「う………!」



そうだ、彼は仮にもジムリーダーなのだ。
忙しいのは当たり前だし、だから今日だって久しぶりの休みだったのに。

それなのに、わたし、は、



「本当に、ごめんなさい…」

「もういい、」

「………呆れちゃった?」

「別に。もうそんなに怒ってねえよ」

「うう……」

「ったく、泣くなって」

「本当に本当にごめんなさいいい……!」

「ハイハイ、」



思わず抱きつけば、ぽんぽんと頭を撫でてくれた彼に、きゅんと胸が高鳴る。
私はやっぱり心底グリーンに惚れているらしい、このまま離れたくないと思った。



「おま、マジ泣くなって!俺の服濡れてんじゃん!」

「あ、」

「はあ………なまえ、」

「…?」

「いいか。今日のは水に流すけど、その代わり、今日は一日中一緒にいろよ」

「え、あ、うん、もちろん!」

「また今度デートしような、」

「……うん!」



ああもうグリーン大好き!





(忘れんぼう)


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