「つ、綱吉…!?綱吉!!?」

「…ん………」



屋敷へ帰ろうとしていたら、急に彼から声があがった。
それを聞いた途端、ベッドに駆け寄る私。



「綱吉っ綱吉っ!!」

「………ぅ、あ………っ」



ああ、苦しいんだ。

彼が顔を歪ましていく度に、それが痛いくらいに伝わってきた。

こんな姿、見たくない。
誰も、綱吉のこんな姿が見たいだなんて思ってないよ……っ!!



「…っ……リ、ボーン……?」



苦しそうにしながらも、ぎこちなく開いていく彼の瞳。



「「………!!!」」



起きた。
起きたんだ、彼が。

やっと……!



「綱吉……っ」

「っ、!」



そう声をかけると何故か、綱吉の表情が険しくなっていった。
体に異変があるのかと不安になっていく。



「だ、れだ…」

「………え…?」

「誰だお前…!!」

「「!!?」」



な、んで……?
どうして、そんな事言うの……?
綱吉、私は、ゆりだよ?
ねえ、綱吉…?



「私、だよ?」

「は…?」

「橘、ゆり」

「………知らない」

「……っ」



ま、まさか…
私の事忘れちゃったの?
リボーンの事は覚えてるくせに…?

……これって、この前に見た夢と似てる。
私だけ忘れ去られてしまった、あの悪夢に。



「なんで……なんでなの…!?」



ぽろり、ぽろり、涙が溢れ出ていく。
一度溢れ出したものは止まらない。



「…………リボーン、」



そして彼は、信じられない事を口にした。



「何で知らない奴がここに居るんだ。………この女を外に出せ」

「十代目、それはっ」

「……やめて隼人」



途中で隼人が口を挟んだけど、それは私によって遮られた。



「…すみませんでした」



そう言って部屋を飛び出す私。
この部屋には居られなかった。
いたら、綱吉に何を言われるか分からなくて。
もう、綱吉の口から恐ろしいことを言われるなんて耐えられなかった。

涙が、止まらない。





忘れられた存在

(どうして、私だけなの…)






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