あれから数日経ったけれど、綱吉の言葉の意味が未だに分からない。
すぐに分かる、ってどういう意味だったんだろう……
うーん………
「どうしました、暗い顔して」
「あ、骸さん」
それは私が屋敷の庭園で、気分転換に散歩をしていた時のことだった。
今日は珍しくファミリー内の幹部ほとんどがお休みで、もちろん私もお休み。
そんななか、私は暇すぎて暇すぎて一人で散歩していたわけだけど…
「また綱吉のことですか」
「骸さんってなんでも分かっちゃうんですね」
「クフフ、あなたが分かりやすいだけです」
「そ、そんな…!」
私そんなに分かりやすいのだろうか。
……そういえば昔、綱吉にも似たようなことを言われたことがある。
ゆりは真面目で堅そうに見えて意外と素直で単純だから、考えていることが手に取るように分かるって……
よく考えてみれば、私って考えていることが顔に出やすいタイプってことを言ってたんだろうね……
……なんて、もう昔の話だけれど。
「そういえば、どうしてここに?」
「ゆりを呼びに来たんですよ」
「え?」
「綱吉が呼んでいます。みんなを集めて、何か言いたいことがあるみたいですね」
「そうなんですか……わざわざ呼びに来てくれてありがとうございます。じゃあ、行きましょう」
綱吉がみんなを集めるだなんて一体何があったんだろう……
そんなことを考えながら私が一歩踏み出したその時、知らない車が屋敷の敷地内へ入ってくるのが見えた。
同じくして、玄関から綱吉が出てくる。
なんだろう、この胸のざわめきは。
まるで嫌なことが起こる前触れみたいな―――――――……
綱吉が車の元へと着くと、中からは1人の女性が出てきた。
その瞬間、ずきんと胸が鈍く痛む。
心なしか心臓の音が早くなっている気がした。
軽くウェーブのかかったあの髪、あの横顔………
あの人は間違いなく、この間綱吉と一緒にいた人だ……!
でも、どうしてこんな所にいるんだろう。
まさか……まさか綱吉に会いにきたの…?
「ゆり?」
急に足を止めた私を不思議に思ったのだろう、骸さんが私の方を振り向いた。
「む、むく、ろ、さん…」
「どうしたんですか、顔が真っ青ですよ!」
「………っ……」
震える体を必死でこらえ、手にぎゅっと力を入れる。
そんな私を見て、骸さんは私の視線の先に気付いた様子だった。
………そして、不意に女の人がこちらを向く。
庭園に植えてある植物や木のせいで私たちの事には気付いていないみたいだったけれど……
私は見てしまった。
あの女の人の、顔を。
今まで横顔や後ろ姿ばかりを見ていたから、顔全体を見ることはなかった。
……だからきっと気づかなかったんだ……私……
なんで?
なんでなんで?
おかしいよ、こんなことってあるの……?
なんで、あなたは私と顔が似ているの?
瓜二つなふたり
(まるでドッペルゲンガーみたいな……)
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