「うああ……どうしてこんなに頭、いたいの……」
それは本部の廊下でのことだった。
私は壁にもたれかかって、頭を押さえる。
昨日、やけになってクロームと一緒に飲んだのはいいけど………いつの間に私、部屋に帰ってきたんだろう。
歩いた記憶もタクシーに乗った記憶もない。
あるのは、お酒を飲みながら愚痴をこぼしてた辺りまで……
そうしたらいつの間にか朝になっていて……
はあ、と溜め息をつく。
ぐわんぐわんと鈍い音のする頭で必死に思い出そうとしたけれど、何も思い出すことはできなかった。
自分でも馬鹿なことをしたって分かってる。
でも、あんな場面を目撃してしまった以上、私にはどうしようもなくて。
やけ酒したって、忘れることなんてできないと分かっているのに、止められなくて。
「どうした」
「ひえっ」
急に声を掛けられて、思わずしゃがみ込んでしまう。
恐る恐る見上げれば、そこには綱吉がいた。
慌てて立ち上がり、服装を正す。
「し、失礼しました、」
「別に失礼とか思ってないけど」
「え、あ、それは……えっと、よかったです」
「で?」
「え?」
「具合でも悪いのかってこと」
「実はひどい二日酔いで……申し訳ないです」
「……ふうん、お前酒飲むんだ」
「普段はあまり………でも昨日は飲みたい気分だったので」
「へえ、」
「も、もちろん仕事に支障をもたらすような真似はしませんので安心してください」
「当たり前だろ、」
ぽん。
優しい手付きで頭を叩かれる。
触れてもらえたことが嬉しくて嬉しくて、思わず涙ぐみそうになった。
なんでこのタイミングで優しくするの、いつもは冷たいくせに。
たちが悪いよ。
「あの……ボス」
「なんだ」
思い切って、こちらから話し掛けてみる。
昨日のこと……聞いてもいいのだろうか。
どうして女の人と一緒だったの?
お休みだったのは、あの人と会うためだったの?
……知りたい。
でも私に、これを聞く資格があるのだろうか?
………ううん、そんなの知らない。
私はどうしてもあなたのことを教えて欲しい。
いいよね……?
聞くくらい、いいよね?
「……昨夜お見かけしたんですが、女性の方と一緒でしたよね?」
「ああ、なんだ見てたのか」
「見てたというか、偶然見かけて………お知り合いの方ですか?」
「……アイツのことは、すぐに分かる」
「そう…ですか」
どうして今、詳しく教えてくれないんだろう………
二日酔いと不安な気持ち
(あの女の人の存在が、こわい)
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