「………遅い」



ぱたん、今まで読んでいた本を閉じる。
ゆりとクロームが帰ってきたらすぐに分かるよう、玄関から一番近い部屋で待機しているものの…………いくらなんでも遅すぎる。
もうとっくに眠る時間は過ぎているというのに…むしろ、もう夜中だ。

アルコバレーノの話だと夕飯を食べて帰ると言っていたみたいですが……
この時間は、さすがに。
携帯も繋がらない以上、クロームが一緒だとはいえやはり探しに行くべきか。


ガタン、椅子から立ち上がる。
念のために用意しておいたコートを羽織って、屋敷を出た。


……しかしすぐ2人と出会うことになる。
門のところに、彼女らが。
なぜかゆりはクロームに支えられていて、歩くこともままならない様子だった。



「こんな時間まで何をしていたのですか」

「骸…さま……」

「まったく、クロームがついていながら…」

「…ごめんなさい、骸さま」

「むくろ、ひゃ…ん……おこら、ない、で、」

「はあ……もう時間も遅い、それにクロームは明日任務でしょう。ゆりは部屋まで送りますから、あなたは寝なさい」

「はい、」



素直に頷いたクロームが去るのを見届けてから、改めてゆりを見る。
とりあえず彼女の部屋まで行かなくては。
一体どんな理由で、立っているのもままならない程飲んだのかは知りませんが………

僕はゆりを抱き上げて、門を後にした。





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カチャリ、ゆりの部屋へ入って彼女をベッドへと下ろす。
部屋に備え付けられている冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コップへと注いでから手渡した。



「あり、が、とお……」

「まったく…どうしてこんな状態になるまで飲んだんですか」

「ひみちゅ、れす、よー」

「ゆり?」

「んー……なあに?」



ごろん、ベッドに寝転がる彼女。
ああもう駄目だ、話が通じない。



「そう無防備に足をさらけ出していると、襲ってしまいますよ」



そう言ってゆりに覆い被さる。
酔ってぼんやりしている頭では言葉が理解できなかったのか、とろんとした瞳で僕を見返した。

……なんて扇情的な表情だ。
いっそのこと、このまま抱いてしまえたら……どんなにいいか。

じっと見つめ合っていたら、彼女の手が僕の頬へと伸びてきた。
柔らかく包み込まれて、どきりと胸が高鳴る。



「ふふ……むく、ろ、ひゃん」

「……誘っているつもりですか?呂律が回っていませんよ」

「…だと、したら、どうします…?」

「クフフ、どうしましょうか」



据え膳喰わぬは男の恥、という言葉を聞いたことがある。

しかし、きっとここで手を出せば――――――……



「駄目ですよ、ゆり」

「ん……」

「どうせあなたは、明日になったら忘れているでしょうしね」



額にキスをしたあと、ゆりの上から退く。
相変わらずとろんとした瞳のまま、僕の方を見ていた。



「さっさと寝なさい、きっと明日は二日酔いで苦しむでしょうから」





普段と違う彼女の姿

(クフフ、酔ったゆりも可愛いですよ)






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