「クローム見て見て、きっとこれあなたに似合う!」
「ゆりったら………私のじゃなくて自分の選びなよ…」
ただいま、お買い物中。
恥ずかしがるクロームをよそに、私は彼女に似合いそうな服をどんどん試着室へ持って行く。
可愛らしさの中に大人っぽさを醸し出す服の数々は、どれもこれもクロームに似合っていて。
私は彼女を着せ替え人形のようにして楽しんでいた。
「だってこんなに素敵なスタイルしてるんだもの、おしゃれしないと損だよ」
「そ、そんなこと……!」
「ほらほら、今度はこっちのワンピース!」
「もうっ」
ああもう、なんでこんなに可愛いんだろう。
……そう考えながら、私は彼女を試着室へと押し戻した。
その数分後に、お店を出る。
すっかり薄暗くなった空を見て、もうこんな時間かと時計を確認した。
実はこのお店で4軒目だったんだけど………
「もう夕方なんだ……」
「まあ、そもそも出てきたのがお昼くらいだったからね」
「うん……」
「リボーンにも夕飯食べてくるって言ってあるし、そろそろ食べに行こっか」
「そうだね」
くるり見渡せば、辺りは洋服専門店ばっかり。
もう少し歩けばレストラン街になるし………
今日は少し遠出をしようか。
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『ありがとうございました』
あれから私達は和風レストランでお食事をしていた。
久しぶりに和食食べたなあ、なんてしみじみ思いながら店の外へと出る。
お互いに帰ろうと言ったわけじゃないけれど、なんとなく足は屋敷の方へと向いていた。
すれ違う人達はカップルだらけ。
羨ましいな、なんて私は俯く。
綱吉が記憶喪失になんてならなければ、私も今頃―――――……
「ボ……ス……?」
「え?」
「ゆりっ、ボスが…!」
慌てた様子の彼女が指差す先を見れば、レストランに入っていく男女の姿が遠くに見えた。
あれは……間違いなく、綱吉だ。
横顔しか見えなかったけれど、あの女の人は誰?
今日綱吉がお休みだったのは、あの人と会うためだったの?
「………っ、」
どうしよう、考えれば考えるほどネガティブになってしまう。
「ゆり…こんなの、きっと間違いだよ」
「クローム…っ」
でもあれは、間違いなく……
私が彼を見間違えるわけないもん。
泣き出しそうな自分を必死で押さえて、笑顔を作った。
「クローム、今夜付き合ってくれる…?」
「え?」
「お願い。飲みに行きましょ」
どうしてあなたは、
(女の人と一緒にいるの…?)
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