それは橘が入院して2日程たった日のことだった。
日々溜まっていく仕事に頭を抱える俺、沢田綱吉。
今更だけど、橘のサポートがどれだけ優秀だったのかがよくわかった。
スケジュール管理とか資料管理とか、コーヒー作ってくれたりとか。
他にも事務的な事をいろいろ。
本当にアイツはよく働いてくれた。
………むしろ、働きすぎなくらい。
そんなんだから過労で倒れたりするんだよ………あの馬鹿。
「………いや、馬鹿は俺か…」
ふっと溜め息をつく。
椅子にもたれて、天井を見上げた。
………馬鹿は自分だ。
自覚はなかったけれど、橘をあんな状態になるまで働かせたのは、紛れもなく俺なのだから。
でも精神的ダメージを与えていたなんて知らなかった。
だいたい、俺はあいつに冷たくした覚えはない!
周りからは辛く当たってるように見えたかもしれないけれど、自分的には普通に接してるつもりだった……はず………多分。
そりゃあ、最初の頃は警戒心があったから「出ていけ」とか言ったけど、あれは後で謝っただろ。
他に俺が何したっていうんだ?
だいたい、あいつだって俺には無愛想じゃないか。
リボーン達には普通に話し掛けるくせに、俺にはビクビク怯えて。
別に仲良くなりたいわけじゃないけど……
そう露骨に態度変えられると、なんかムカつく。
「……はあ、」
本日何回目かも分からない溜め息をつく。
机に身を投げたら、ひらり、写真が一枚床に落ちた。
それにつられて、ちらっと床の方に視線を向けたが、また視線を戻す。
……そうだ、明日はカルーアさんの孫と会うんだっけ。
橘とよく似ていた、あの顔立ち。
気にならないと言えば嘘になる。
むしろ、俺の超直感が何かを告げているような気が……
とにかく、違和感を感じる。
何かしら引っかかるものがあるらしい。
「……見舞いでも行ってやるか」
そう呟いた後、立ち上がった。
きみがいないと
(こんなこと認めたくないけれど、)
(俺は何もできないらしい)
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