「はあ………目が疲れた」
退院した次の日。
綱吉は本部にある執務室にて私の用意した書類に目を通していた。
本当には昨日からやっている、この作業。
どうやら、さすがに三年間のデータは多すぎて大変なようだ。
そして、リボーンと私はその様子をソファに腰掛けつつ眺めていた。
「ツナ、珍しく頑張ってんじゃねえか」
「珍しくは余計」
「でも、あとはその手に持ってるやつで終わりなんだろ?」
「ああ……やっと読み終わるよ」
「ちゃんと頭に入ってんのか?」
「まあ、ほとんどうろ覚えだけど」
すごいなあ、綱吉。
たくさん山積みにされていた書類を、たった2日だけで把握するなんて。
たとえうろ覚えでも、すごい。
……私みたいに秘書なんだったら、それくらい簡単にやってのけないと仕事にならないのだけど……
でも、綱吉は秘書じゃなくボスなのに。
…そう思いつつ私はソファから立ち上がった。
「お疲れでしょうからコーヒーでも入れますね」
「ああ、頼む」
「じゃあ俺も」
「うん」
そう言ったあと、給油室に行って、ポットにお湯があるかどうかを確かめてからコーヒーを入れる。
種類と産地が細かく分けてある豆がたくさん用意されていて、その中から何種類かをブレンドして使った。
長年の付き合い(…といっても三年間だけだけど)で、彼らの好みはだいたい熟知しているつもりだ。
特に濃さとか、リボーンは結構細かいしね。
2人分のホットコーヒーを用意して部屋に戻れば、それはちょうど綱吉が書類にひととおり目を通し終わったところだった。
どうやら、今から休憩タイムに入るらしい。
「どうぞ」
「サンキュ。………ん?」
「どうかなされましたか?」
「いや……これ、見覚えのある味だな、と…」
「頭じゃわからなくても体は覚えてるもんなんだな。見覚えがあって当たり前だ、お前は毎日飲んでたんだぞ」
「毎日……」
覚えてるんだ……なんて少し嬉しく思っていたら、その瞬間に部屋のドアが「バタン!!」と勢いよく開いた。
荒々しさに、三人ともドアのほうを振り返る。
「たっ、大変です!!」
「どうした?隼人」
「内部に何者かが侵入した模様です!敵は恐らくカレッタファミリーの者かと」
「なんで今頃…………まあいい、内部に入れたのは何人いるんだ?」
「100人以上で押し掛けたらしく、庭には大勢いるんスけど……中へは奴らのボスと数名の幹部が」
「ふーん」
なんでこんなタイミングでボンゴレを襲ってきたのかな?
もう綱吉は復帰してるのに……
まさか、病み上がりなのを狙って……!!?
「十代目、どうしますか」
「そうだな………とりあえず、外にいる奴らはやっちゃって。中にいる奴らは適当に放っておいていいから」
「了解っス!でも中の奴らは……」
「まあ、数十分したらここまで来るだろ。それを待つよ」
外から銃声のようなものが聞こえてきたような気がする。
もう戦闘は始まっているのだ。
「あと、お前らは出てって。ここには俺1人残るから」
「えっ!?」
思わず声をあげる私。
1人って、それで大丈夫なの!?
綱吉は昨日退院したばかりなんだよ?
まだ病み上がりなんだよ?
…………そう私が心配しても、彼の瞳はすごく真っ直ぐで、私ごときが何を言っても無駄なんだと分からされた。
「ちょうど体もなまってたところだし、肩慣らしにはいいだろ?」
綱吉が簡単に負けるわけない、そんなことは充分わかっているのだけど。
でも、それでも私はやっぱり心配で……
もう二度と綱吉に、傷ついてほしくないのに。
侵入者、発見
(こうなったら私も……!!)
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