「あ、雲雀さん!」
「…………やあ」
陽も暮れてきた頃。
私は未だに綱吉の部屋の荷物を整理する作業をしていた。
………とは言っても、あとは荷物を自分の部屋へ持って行くだけなんだけどね。
そして、それらを運んでいる途中に、廊下で雲雀さんに出くわす。
たくさんの物を抱えているせいか、前がよく見えなくて、あと少しで彼を見落とすところだった。
「綱吉の様子、ちゃんと見てきたよ」
「本当ですか…!?ありがとうございます!それで……どうでした?」
「まあ、それなりに元気そうだったけど。先生の話によると、信じられないくらいの回復力だから今週中には退院できるって」
「そう………よかった…」
もうすぐ、綱吉が帰ってくるんだ。
このボンゴレに。私たちの元に。
……そう思うと、なんだかほっとしたような気持ちになれた。
本当によかった………回復できて…
綱吉が倒れたと知ったとき、もう二度と目を覚まさなかったらどうしよう、って思ったもん。
結果的には記憶を失っていたわけだけど、でも、一番大事なのは彼の安否だ。
死ななかったことだけでも、不幸中の幸いと考えなくちゃ………
「じゃあ、僕は行くよ」
「はい!」
「…君は重い荷物を持っている女性を助けずに立ち去るつもりですか?」
「む、骸さん!」
突然誰かが会話に混ざってきたと思えば、それは私の後ろにいつのまにか立っていた、骸さんで。
でも、一方、雲雀さんはというと………………
「うるさい。君が手伝えばいいじゃないか」、なんて言って立ち去っていく。
骸さんは溜め息をついて、その後ろ姿を見送った。
「ああ、まったく役に立たない男だ」
「いいんですよ、私なら大丈夫だし」
「…………そういうわけにもいかないでしょう。そんなに物を抱えて、前がちゃんと見えているんですか?」
「あっ…………」
ふいに、視界から物が消える。
骸さんが半分(…ていうか半分以上?)持ってくれたのだ。
「これ、ゆりの部屋へ持って行けばいいんですよね」
「は、はい………わざわざすみません」
「クフフ、これくらいどうってことないですよ」
やっぱり、骸さんはいつも私を助けてくれる。
なんでこんなに優しくしてくれるのかな…?
私、特になにもしてないのに………
……そんなことを歩きながら考えていると、昼間に考えていたことを思い出した。
ありがとうって。
いつもすみませんって。
それを彼に伝えたかったんだ。
「あの、骸さん」
「なんですか?」
「今朝の新聞読みました。ワストファミリー、壊滅したんですね」
「ああ…………あの記事ですか」
「私、そのことについてすごくお礼が言いたくて………敵討ちありがとうございました」
「気にしないでください、僕が勝手にやってることなんですから」
「でも………」
「気にするなと言っているでしょう?」
「……じゃあ、なんでこんなにも骸さんは私によくしてくれるんですか?」
そう聞くと、骸さんは足を止めた。
まさか、こんなことを聞かれるとは思ってもいなかったらしい。
……でも、すぐにまた歩き出して彼独特の笑い方をした。
「クフフ………それは、あなたがゆりだからですよ」
「………?」
私、だから…………?
助けてくれる理由
(どういう、意味……?)
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