「はあ…………」



深く溜息をつく。
それも、元恋人の部屋で。
一体そんなところで何をやっているのかというと…………これは、掃除だ。
今までボンゴレの屋敷に住んでいた私は、ずっと綱吉と同室だった。(恋人同士になってからだけどね)
決して、自分の部屋がない、というわけじゃない。
ちゃんとある。
……ただ、綱吉の部屋からは少し遠くて。
お互い会いに行くときめんどくさいから、と綱吉が言って私はそれからほとんど彼の部屋で寝泊まりしていた。(やっぱりボスなだけあって、部屋は私の部屋よりも豪華だ)
でも………それも、もう出来なくなった。
いい加減、一人部屋に戻らなくては。

だから私はその準備をするために、今、綱吉の部屋で奮闘しているのです。
見渡せば、至るところに私のものだと特定できるものがあって。
だからそれを全て自室に移さなければならない。
二人のアルバムとか。
私のクッションとか。
その他、いろいろなものを。
こうして見ると、この部屋にはたくさん私と綱吉の思い出があるんだなあ……



「あ………」



ふと、ペアのマグカップを見つける。
オレンジときみどりの。(ちなみにきみどりのほうが私のです)
懐かしいなあ、なんて顔がほころんで、一時的だけど幸せな気分になれた。
私の誕生日に、綱吉が贈ってくれたんだったよね。
"なにがほしい?"なんて聞かれて、"お揃いのものがほしい"って答えて。
そしたら、このマグカップをくれたのだ。



『これ、一生大切にするね』

『そうしてもらえるといいけどな』

『な、なにその言い草……』

『だってお前すぐ壊すだろ?』

『壊さないしー!』

『うわ、叩くなって!ゆりっ!』



懐かしいなあ、あの頃はすごく幸せだった。
毎日が楽しくて、たまにはいちゃいちゃしたりして。
このままいけば、いつかはボンゴレ夫人になるんじゃないか、なんて噂されたこともあった。
多くの人から羨まれて、反対に憎まれたりもしたし、でも、なにかされるたびに綱吉は私を守ってくれた。
お互いに、愛してるだけじゃ言い表すことが出来ないくらいに大切な存在だったのに、今ではどう?
変わりすぎてる。
未来なんてものは常に変わっていくものだ、と誰かから聞いたことがある気がするけど、いくらなんでもこれは変わりすぎだよ………

たくさんの古い思い出を目の当たりにして。
懐かしいなあ、と一人で過去を振り返ってみて。
…………また、泣き出しそうになる。
ああ、わたし最近変わったなあ………
前はこんなに涙もろくなかったのに、ね。



「……あ………もうこんな時間…」



はっと我にかえり時計を眺めれば、もう正午をすぎていた。
結構早い時間帯から掃除し始めたのに……時間がすぎるのは早い、とつくづく感じさせられる。

そろそろ昼食を頂こうか。
この部屋の整理は、また午後にするということで……





色褪せた思い出

(思い出すのは幸せなことばかり)






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