「さぁ、やすみなさい」

「……は、い…」



骸さんに連れられて、屋敷へ帰ってきた私。
パタン、自室の扉を閉めると、懐かしい感じがした。

………最近は綱吉の部屋ばかりで寝てたからな…
自分の部屋で寝るなんて、久しぶりだ。
むしろ、一人で寝るのが久しぶり。


そう思いながら、ベッドに倒れ込んだ。



「…綱吉……」



ぽつり、あの人の名前を口に出してみる。
……応答があるわけないのだけれど。


いつもそばには彼がいて、彼と食事して、彼と寝て、それが私にも、彼にとっても当たり前だった。

でも、今は違う。
彼にとっての当たり前が、変わった。

私の存在全てが、彼にとっては、ありえないものとなった。


―――――――まさか、私の事を忘れてしまうだなんて…
そんなこと、考えたことも無かった。


これからもずっと一緒に……いられると思ってた。



目を閉じれば映る、彼の顔。
意地悪で、たまに優しくて、なにより大好きだった。

でも、今日綱吉からかけられた言葉は、表情は、とても残酷なもの。

出ていけって……
あの、怖い顔で。


初めて、彼のあんな表情を見た。


思わず、涙が零れそうになって、直ぐさま部屋を出たけど…


『俺とお前は身分が違う』


そう言われているみたいで、悲しかった。


確かに、違う。
彼はファミリーのボス。
私は彼の秘書。

本当なら、私達が恋人なんていう関係になるはずがなかった。

でも、なってしまったのだから仕方ない。


―――――依存しすぎて、彼は私にとって欠かせない存在になっているのに――



もう、戻れないんだね、私達。
貴方が私のことを忘れているかぎり…





貴方を想うココロ

(私、諦めたくない)
(貴方のこと、手放したくない)






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