黙って、俺は外を眺めていた。



「…………」



その瞳に映るのは、二人の男女。

さっき馴れ馴れしく呼び捨てにしてきた女と、守護者である骸。
二人は抱きしめ合っていた。
………すくなくとも、俺にはそう見えた。



「お前、本当にあいつの事覚えてねぇのか」

「……誰だよあいつって。あの女のことか?知らないからな」

「……………記憶喪失、か」



記憶喪失?
何なんだ一体。
リボーンは何を言ってるんだ?

そう思いながら眉間にシワを寄せると、



「ツナ、今日は何年何月何日だか分かるか」



なんて、わけの分からない事を聞いてきた。
この歳になって日付が分からないような馬鹿、いるわけ無いのに。



「馬鹿にするな。20**年の*月*日だろ」

「…………」



苛々しながらも答えたら、向こうは完全に黙った。

そして、



「どういうことだ?」

「………さぁな」



ひそひそと、何らかの話をしている守護者たち。

全く、本当に何なんだこいつらは!!



「お前、昨日何してたか覚えてるか?」

「は………?」



そう言われてようやく気付いた。
リボーンが、記憶喪失と言ったわけを――――――

昨日の記憶が、無い。



「俺、何を、してた…………?」

「………思い出せないんだな」

「……………っ」



何で、何で思い出せないんだ…っ!!?
昨日も、その前も。

何を食べて、何をして、どうやって過ごした?
…………ただそれだけの事が、俺には分からない。

思い出せない。

日付とかの感覚はきちんとあるのに、分からない。
記憶だけが、ない。



「…くそ……っ!!!」



そう荒々しく呟いて拳をにぎりしめた。

もやもやして、気持ちが悪い。
まるで、暗闇に閉じ込められたみたいに――――



「……獄寺」

「は、はい!」

「今すぐドクター呼べ。こいつを診断してもらう」

「分かりました!!!」





失った何か

(考えろ、何があったか…)
(何か忘れてはいけないことがあったはずなのに、)
(どうして頭が空っぽなんだ)






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