知っていますか、私があなたのことを想っていること。



「十代目ー!」



………いいや、知るわけない。
馬鹿だもん。
こいつ馬鹿だもん。
ツナのことばっかり言ってるアホだもん。

今だって、ほら。
ツナに話しかけにきたらしい。
残念ながら、私の隣の席の子はさっきどこかへ行っちゃったけど。



「ツナならいないよ」

「なに!?どこ行った!」

「さあね」

「ちっ………」



はっきり聞こえるくらい大きな舌打ちをしたと思ったら、彼はツナの席に座った。
……あいつが来るまで待つつもり…なのかな。
まあ休み時間は限られているし、数分待てば会えるだろうけど。

さっきは平静を装って話しかけてみたけれど、内心はすっっっごくどきどきしてて。
ばくばく音がする心臓をどうやって鎮めようか、そのことで頭がいっぱいだった。

今もまだ少しどきどきしてる。



「…………おい」



ひいっ、話しかけられた!

………いや、リラックスリラックス。
騒がず慌てず落ち着いて返事をするのよ、なまえ!



「………なに?」

「お前十代目と仲良いのか」

「悪くはないけど…良くもないかな」

「………へえ」



え、え、なにこの会話。
それだけ?
それだけなの?
っていうかきみは何が聞きたかったの!?

それから彼が口を開くことはなくて、しばしの沈黙が流れた。
耐えきれなくて、私から話しかける。



「獄寺ってさ、見た目怖いよね」

「っ!………なんでそう思うんだよ」

「なんか不良っぽいからかな?制服も着崩してるし、アクセは着けてるし……よけいに怖く見えるのかも」

「…………」



少し傷ついたらしい彼は、小さく溜め息をついたあと眉間にシワを寄せた。

………あ、なんか可愛い。



「お前、意外とはっきり言うんだな」

「はは、ごめんね正直で」

「………ちっ…」

「傷ついた?」

「…好きな奴に怖いって言われたら傷つくだろ、普通」

「………え、」



ぽそり、小さく呟いたつもりなのだろうけど、私にははっきりと聞こえていた。
どきどき、また胸が高鳴り始める。


さっき、好きって、言った?
言った……よね?

え、うそ………
信じられない、それって本当なの?



「ごくで、」

「獄寺くん、そこ俺の席なんだけど」

「あっ十代目!」



この時ほどツナを恨んだことはないと思う。
まさかこのタイミングで声が重なるなんて。
ツナに悪気がないってことくらい分かってるけど、今回ばかりは許せなかった。

この……ダメツナめ!
ばか!ばかばかばか!



「十代目がいなかったんで待ってたんスよ!」

「そうなんだ…(な、なんで俺みょうじに睨まれてるんだろう)」



今ここで、さっきの呟きの真意を確かめることはできないけれど。

でもね、獄寺。
知っていますか、私もあなたのことを想っていること。





恋心はここにある

(早く気付いてください)


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