ある日の午前中。
私は台所に立ってチョコレート作りに必要な材料たちを眺めていた。
今日はバレンタインデー。
年に一度の、大事な大事なイベントだ。
もちろん私もツナくんにつくろうとしているんだけど………



「よーし、ゆせんするか!」



その掛け声とともに、お湯をボウルにはる。(チョコレートを溶かすために、ね)
毎年毎年、手づくりので渡してるからもうチョコレート作りなんておてのものだ。
美味しい、って言ってもらえることが嬉しくて。
喜んでくれることが嬉しくて。
だから料理をするのは好き。



ピンポーン



「…………え?」



ふいに、チャイム音が鳴る。
来客の知らせだ。
まだ昼前なのに、なんでこんなに早く………?
まったく、今日中にチョコ作って渡さないといけないから忙しいっていうのに。
そうぶつぶつ言いながらも私は玄関へと足を運んだ。
そして「どちらさまですか?」なんて言って扉を開ける。
するとそこに立っていたのは、



「…………えええ」

「なんだよその顔」

「だ、だってなんでここに…ツナくん」



目の前には、自分の大好きな恋人。
チョコレートを作るのも、大半はこの人の為なのに。
なのになんで作ってる途中に来るんだよう……!!(タイミング悪っ!)



「なに?俺が来ちゃ悪いっての?」

「そんなことはないけど、…………いや、やっぱり今日は駄目!」

「はあ?なんで」

「とにかく、今日は駄目なのっ」

「ふーん………」

「またあとでツナくんの家に行くから、それまでは待ってて?ね、お願い」

「わかった………なんて言うと思った?この俺が」

「え?……っあ!」



私の制止も聞かずに家に上がり込む彼。
くそ、騙された……!
なんて思っているうちにどんどん奥へ。
わああっ、このままじゃあれ作ってることばれちゃう……っ!!(そんなのやだーっ)



「なに?この甘い匂い」

「い、いや、あの……ってそっち行っちゃ駄目だよっ!」

「行くなって言われるとますます行きたくなるんだけど」

「でも、だめ、なの…っ」

「…………」

「こらそこ無視して行くなー!!」

「……………あ」



ついに台所を覗かれる。
あちゃー、と私は頭を抱えた。
ツナくんてば強引すぎるよ……
何回も駄目だって言ったのに。
ひどい、ひどすぎる。
ツナくんのばかーっ!!



「なに、チョコ作ってたんだ?」

「見ればわかるでしょ……」

「まあそうだけどさ」

「もう台なしだよツナくんの馬鹿ーっ」

「いいじゃん、待っててやるよ」

「っ!こんなバレンタインやだ…」

「うるさい。さっさとやれ」



ああもう本当になんなの今年のバレンタインは……!
そう思いつつもおとなしく作業に戻る。
ツナくんが間近で見ていてかなり緊張するけど、気にしてなんていられない。
だって早く作らなくちゃだもんね。



「そんなにたくさん、誰に作んの?」

「えーと……ツナくんと武くんと隼人くん、リボーンくん、フゥ太くん、あとはランボくんとイーピンちゃんとか、かな?」

「へえ…………じゃあ、」

「?」

「本命は、誰?」

「……!!」



にやにやと、こっちを見ながら笑うツナくん。
その問いかけに思わず頬を染めた。
わざわざ聞かなくてもわかってるくせに、なんて意地が悪いんだ…!
こーゆーとこ、高校生になっても変わってない。(そして、いつまでたっても大人げない)



「そんなこと、わ、わかってるくせに…」

「もちろん」

「……っ……」

「でも、」

「………?」

「やっぱ聞きたいし、好きな奴の口から」



ずるい、と思う。
そんなこと(好き、とか)言われたら………
またドキドキしちゃうよ。
言ってあげてもいいかな、なんて思っちゃうじゃん…



「なあみつき、本命は?」

「…う………」

「さっさと言わないと、キスするけど?ふかーいの。しかもみつきが立てなくなるまで」

「わああっ、なに言ってんのーっ!」

「じゃあ早く」

「………つ、つ、ツナ、くんに決まってるでしょ…?」

「だよなー」



いつにも増してにこやかにそう相槌をうつツナくんに、何故か悔しさが込み上げてくる。
本当に楽しそうだ。
言わされたこっちはすごく恥ずかしいのに。
ツナくんだって、私の本命はツナくんしかいないってわかってるはずなのに。(………確信犯だよ絶対…)

でも、そんな彼がたまらなく好きだったり。





きみに贈るバレンタイン
(1番最初に、食べてね?)






「まだ?」

「うーん、あともうちょっとだから待ってて」

「あー………なんかキスしたくなってきた」

「ええ!?だ、だめだからね!そんな暇はないの!」

「一回くらいいーじゃん」

「うっ……………したらチョコあげないからね!」

「…チッ」



油断も隙もないけれど、それが私のツナくんなのです。






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