Panic Days! | ナノ


▼ Mission complete

「……この状態を説明していただけると、誠にありがたいのですが」


なんで私はあのテニス部、もといイケメン軍団達に囲まれているのでしょうか。辞書を真田に貸して拉致られて連れられてきたのはなんとイケメン軍団の巣窟で、そこにはレギュラー陣が勢揃いしていてそれにピキーンと固まった私は現在進行形でパイプ椅子に座らされてるなうだけれども。その状態に脳の回転が着いて行かなくてショートしている頭。まったく理解できない。

立ちはだかる巨人(真田と柳)を見上げて切実に訴えた。
まじで教えてくださいこの状況。なんでイケメン軍団が勢揃いしてるんすか。


「朝、俺はお前に忠告をしたはずだが?」
「…………まじ?」


あの忠告が本当になったとでも?
幸村が私に興味を持って近いうちに幸村と私が接触するって、予想した柳のあれが、本当になると。確かに忠告されたよ私。うわあどうしようとか思ったよ私。でもいくらなんでも早過ぎねーか。忠告されたの今日の朝だよ。それで今昼休みだよ。いくら忠告されても手の打ちようななくねーか。

つかまじかあああああ何これこの状況絶対いまから幸村部室に来る雰囲気だよね。だってレギュラー陣勢揃いってそれしか目的ないもんね。でも私と接触したいなら幸村だけでよくないですかー私、赤髪の丸井ブン太にめちゃくちゃ睨まれてるんスけどー!


「なあ柳ー、ほんとに俺もいなくちゃいけねえのかよー。帰りてえんだけど」
「帰っても構わないが、後で精市に何を言われても知らないぞ」
「ちぇー。つーかこんな女に何の用があんだよ幸村君」
「それは私が一番知りたいよね」


うん本当に。
だって私被害者だからね。
ここに拉致られてきたからね。
目的一番知りたいよね。

本当につまんなそうに苛々し始めた丸井ブン太は鬱憤晴らしにジャッカルに八つ当たりに向かった。私の前に立ちはだかる巨人二人は二人で勝手にそれぞれ会話を始めちゃうし、仁王と紳士も話してる(仁王めっちゃ眠そう)。……あれ、切原いなくね。切原ーはどー「ねえ先輩」うおっ。
切原は巨人二人の影に隠れて見えなかっただけらしい。突如掛かった声に驚いたけれど、切原はパイプ椅子に座る私の前にやってきて、奴は床に直接座った。私を見上げる1年坊主。


「先輩、ジャッカル先輩とメル友っしょ?あのメールは笑ったっス!『一年坊主をぎっためったにしてやれ』ってやつ、よくあんなメール打ちましたよねー」
「おいちょっと待てなんで切原がソレ知ってんの」
「ジャッカル先輩のメール見たんスよ!それくらい分かんないんスか?」
「あれ。その言い方イラっとくるね。思わず口が滑っちゃいそうだなっ」
「すんませんした!!」


私に敵うと思うなよ一年坊主。私はお前の隠し事に加担したんだかんな。ちょうどここには真田も柳もいるし、真田の鉄拳制裁を受けちゃえばいいよ。でもすぐに謝ったから許す事にした。……元々ばらす気はないけどね。可愛い可愛い後輩を地獄に突き落とそうなんて思わないよ。
私と切原の会話に真田と柳は興味を持ったらしいけれど「なんでもない」と首を横に振ると興味は逸れた。真田は本当に知らなそうだけど柳は薄々気づいてそうだ。切原が本当は保健室掃除してないってこと。まあ、それで何も言わないんだから優しい先輩だよね。


「…ジャッカルとメールしたのって、お前かよ?」


けれど、気になったのは巨人二人だけじゃないらしい。なんと。ジャッカルに八つ当たりしてた赤髪ブン太も興味を持った。え。なんで君が興味を持つ。えええつーかジャッカルお前何人にあのメール見せたんだ!


「うん?そうだけど」
「まじかよい!」


驚いた丸井ブン太はすぐに腹を抱えて笑い出した。え、ちょっと君。お若いの。イラついたり八つ当たりしたり急に腹抱えて笑ったり、感情の制御ちゃんと出来てますか。情緒不安定じゃないですか。大丈夫ですか。
ぶあっはっはっは!!と笑い出した丸井ブン太に怪訝そうに眉を顰める。だって…ねえ。変だよこのひと。


「はー笑った笑った。まあそれは置いといて、お前、あん時真田となに話してたんだよ」
「あの時……ああ、あれ?あれねー。私がいつまでもノート返却出来ないからって真田が代わりにやってくれたんだ。その時はいい奴だって思ったのにね」
「その時は?…じゃあ、いまはどうなんだよい?」
「え?拉致られたのにいい奴とか思えるわけねえだろ」


にっこり。気持ち良いほど笑って言ってやった。
ほんと。あの時はいい奴だと思ったのに。辞書貸してくれとか言われたときは「あ、これ普通に友達として話せんじゃね?」とか一瞬思ったのに、その仕打ちがこれとは。裏切られた気持ちだわ。……でも本意でやったわけじゃない(かもしれないから)そんな事は言えないけれど。


「あっはっはっは!!先輩おもしれー!!」


え、ちょ。ここ笑うとこじゃなくね。
受け流すとこじゃね。なんで笑うんだわかめと赤髪。


「先輩、本当に俺らのファンなんスか?ファンでよくそんなこと言うっスねー。つか多分先輩のメールにあった一年坊主って俺っスよ」


はー、と目の際に溜まった涙を拭いながら切原はなんとカミングアウト。メールにあった一年坊主が切原とな。ジャッカルと名も知らない後輩くんをぼこぼこにしたあの張本人が眼前で目を擦っている切原だと。……まじで。あの犯人って切原なんだ。
カミングアウトした張本人は私がどう行動に出るのか楽しみにしているらしく見て分かる通りワクワクしている。おいおいおいおいワクワクすんなって私が困るじゃどう反応していいやら。


「……うん。とりあえず何でジャッカルをぼこぼこにしちゃったのかな」
「俺、赤目になるとああなっちまうんスよねー」
「相手をぼっこぼこにすんの?」
「うス」
「へえ」
「うス」
「……」
「で?」
「で?」
「もう何もないんスか?」
「え?うん。あんま期待すんなって」


これ以上私が何も言わないと分かると切原はちぇーと可愛らしい舌打ちをしてつまらなそうな顔をした。だからそんなに期待されると困るって私がどう反応すればいいか分からないし。

そう思っていると、突如。不意に部室のドアが開いた。それぞれに会話を織り成していたイケメン軍団は会話を止めてドアに顔を向ける。それはつまらなそうな顔をしている切原とようやく笑い終わった丸井ブン太も例外では無くて、もちろん私も向いて。──イケメン軍団を束ねる部長と御対面の時間です。


「やあ、藤崎さん。俺は幸村精市。急にこんなとこに連れ出して悪いね」


部室に入ってきた部長は、パイプ椅子に座る私に目を向けたまま歩み寄ってきた。やっぱり綺麗だ幸村。男子に綺麗って表現もおかしいかもしれないけどそこらの女子(私を含む)より絶対綺麗だ。肌は白いし笑った顔なんて男子も女子もきゅんてときめきそうな気がする。──まず私がその虜になった。だって幸村微笑みながら歩み寄ってくるんだもん無条件でときめく!

ごもごもと口籠りながら「いや大丈夫ですけど…」と何とか言うけれど、とりあえず私はそんなことよりここに拉致られた目的を知りたいわけだ。幸村が純粋に興味を持った…って柳は言ってたけど、ただ興味を持っただけで部員使ってまで(レギュラー陣揃えてまで)部室に連れて来るかな普通。


「…ここに連れてこられた理由。…教えてくれない?」
「ああ、その事なんだけど、実は君に頼みがあるんだ」


そうそう、と思い出したように幸村はパイプ椅子を引っ張りながら開口する。

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