Panic Days! | ナノ


▼ 捕獲作戦会議


『朝のSHR終わりに屋上に集合』


朝のSHRが始まる直前、精市からそうメールが届いた。そのメールを呼んだ途端藤崎に関することだと察知した。とうの本人は朝から騒いだお陰で居眠りしているに違いない。そう思うと可笑しくて笑えた。
SHR終わり、精市からの招集に応じるため教室を出てわざと藤崎の教室の前を通り過ぎて屋上へ向かう。E組前方のドアから藤崎の様子を覗くと机に突っ伏してやはり寝ている姿が目に入った。やはりおかしな奴だと、零れそうになる笑みを抑えて俺は屋上へ向かった。


「幸村、一体どうしたというのだ」


精市の招集に応じた俺たちが集まり先ず一番に開口したのは弦一郎だ。切りだそうにも切りだせなかった話題に、それぞれが興味を持った面持ちで精市の回答を待っている。微笑むその表情には明らかな企みが含まれていて、ご愁傷さまと心のなかで藤崎に言って俺はにやりと笑った。自然とそう笑うのが分かった。


「企んでいる確率98%、だな」
「おいおい、なに企んでるんだよい」
「企むって酷いな、柳、丸井。ただ協力してもらいたいだけだ」


精市が企むことを大凡の範囲で予想していることを、精市はきっと分かっている。それだからか苦笑交じりの笑みを向けられたが、俺は先程浮かんだ笑みを消すことが出来なかった。──実に面白そうだ。まだ明かされない精市の招集目的に不思議そうにする者は俺以外。


「私たちに、一体何を?」
「ちょっと捕まえてほしい人がいるんだ」
「…藤崎、じゃな」
「えー?!あの先輩スか?!捕まえてどうするんスか、幸村部長!」
「…む?藤崎とは?」
「俺たちほとんどが話したことある女っスよ!真田副部長は知らないんスか?」
「知らんな」
「で、俺たちは何をすればいいんだ?」
「彼女を昼休みに部室に連れて来てほしい」
「幸村、部室に女を入れるなど、」
「頼むよ真田。今回限りだ」
「……う、うむ。今回限りならば」
「助かる」
「精市、その役目は俺と仁王に任せてもらおう」
「プリッ?何で俺と参謀なんじゃ」
「詐欺(ペテン)が必要になる。ジャッカル、藤崎のアドレスを教えてくれ。俺がジャッカルから聞いたとしても気にしないだろう」
「ああ。赤外線で送るぜ」


携帯を取り出しジャッカルから藤崎のアドレスを入手する。あいつは俺を何と認識しているのかは知らないが既にアドレスを知っていると思われているらしい。今まで興味のなかった藤崎のアドレスを知っている筈もないのだが今回入手すれば藤崎の勘違いは本当になる。いい機会だ。


「……柳先輩、楽しそうっスね」
「柳のやつ、イキイキしてるぜ……しかもジャッカルのくせして活躍してる。あとで菓子奢らせてやる」


後ろで小さく聞こえた声。
赤也と丸井の会話に心の中で小さく笑った。

楽しそう?イキイキしている?ああ、そうだな。確かに楽しさを感じている。藤崎のように先の読めない不可思議な女には興味がそそられるからな。
──覚悟しろ、藤崎。

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