Panic Days! | ナノ


▼ 始まりにすぎない


奇遇だ。
奇遇すぎて笑える。
なんだこの奇遇さ。


「また藤崎か」
「また柳か」
「奇遇だな」
「奇遇すぎて疑いたくなるね」


私は今日もひとりで登校ですよ。ハニーはちゃんと学校に来るらしいけど家の用事が忙しいらしくて遅刻してくると朝にまたメールがあって。それが原因か分からないけれど朝から私のテンションはガタ落ちでまた携帯音楽プレーヤーを相棒にイヤホンを付けながら歩いてたらまた柳と会った。ばったり遭遇してちょっとこの奇遇さを笑って疑いたくなったけど、朝から笑う気分じゃないし疑っても答えに辿り着かないから呆気なく止めた。昨日の朝みたいに衝突はしなかったけどばったり遭遇したからか昨日みたいにまた並んで歩いたりして。


「また今日も目の保養をしているのか?」
「あーそんな気分じゃないのよね。それに私は心のイケメンを見付けた」
「……心のイケメン?」
「本当に必要なのはただのイケメンじゃなくて心がイケメンな奴だと私は悟ったのだよ」


そう。昨日保健室で消毒してからメル友になったジャッカルとかね。あれは心のイケメンだと私は悟ってしまった。まあ柳で目の保養してるっちゃしてるんだけど、でも口先だけは否定しておこうかと。


「そんなものただの無駄だぞ」
「心読めんのかあんたは」
「顔に書いてある」
「やっべ」
「ジャッカルだろう」
「………なぜそれを」


私それは言ってないよね。柳に言ってないよね。だってジャッカルとの秘密にしたんだもん「イケメン軍団には秘密にしててね」って言ってバイバイしたのにそれから柳に会ってないのに。もしかしてまた顔に書いてあるとか言うの。私どんだけ顔に出やすいんだ。顔に出ているのかと頬に手を添えてぐにぐにしていると隣を歩いていた柳がふっと笑う声が聞こえた。そのまま背の高い柳を見上げるとその細い目で私を見下ろしている。どこか楽しそうで。……なんか昨日から変なの。楽しそうに笑ったり可笑しそうに笑ったり。というかなんかやっぱりイケメン軍団遭遇率高いよ。まさか私そんなフェロモン出してる?んなわけねえだろ。


「ねえ聞いて。ひとつ聞いて」
「俺が答えられる範囲ならな」


あれ。デジャヴ。


「なんか私イケメン軍団と遭遇率高いんだけど、なんで?」
「…俺の答えられる範囲ではないな。ちなみに誰に会った?」
「えーと。………………柳生以外、っすね」
「…………精市ともか」
「そうそう、私ハンカチ拾って貰っちゃったんだよ!すごくない?」


にへら、と顔がにやけながら柳を向くと柳が「…確かに、あの精市がな」と手を顎に添えて考えごとをしながら頷いた。だって本当ににやけちゃう。だってあの王子さまがハンカチを拾ってくれたんだよ私の。ハニーから逃亡してるときに校庭の端で私のハンカチを。…なんであそこにイケメン軍団部長の幸村がいたのかは未だ不明だけども。
指折り数えているとひとりまだお会いしてないイケメン軍団がいた。ジェントルマン柳生。紳士らしいけどなあ。最近はイケメン軍団遭遇率が高いのになんでジェントルマンとは会ってないんだ。うむ。不思議じゃ。

そういえば、と柳は顎に添えていた手を放して私を向いた。


「昨日の追試は合格したのか」
「…!そう私一発合格したんだよ!あの大嫌いな数学を!」
「ほう。やればできるのか」
「そうらしいね実は。私はやればできる子らしいね」


昨日のを思い出したらつい嬉しくなって、並んで歩く柳の腕をばんばん叩いて嬉しさの表現をした。うお柳って腕かたい。やっぱり筋肉すごいんだろうな。──…変なことを思っていたことと嬉しさで柳がノートになにかを書いていたなんて気づかなかった。






「さあハニーが来るまで寝てよーっと」
「そうしてお前は成績が危うくなるんだろう」
「おっとそれを言っちゃいけねえぜ参謀」



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