幼なじみが協力してくれて、私が惚れた人は別の部署に所属している日下部さんという名前の人だという。

去年の夏に入ってきたらしい。

「日下部さん別の部署かぁ
なかなか会いに行けないなぁ」

「そうですね。君は仕事も溜まってますし」

ドサッと書類がデスクに置かれた。
え、なに。嫌がらせ?

「南野さん、これ昨日の残業の時終わらせましたよ?」

「訂正があります。
赤字の所をチェックしてもう一度書き直して下さい」

チェックしてみればそれはそれは結構な数の訂正があった。

「うわー…」

こればかりはミスった自分が悪い。

「こんな初歩的な書類、貴女が入ってきたばかりの頃俺がみっちり教えましたよね」

「すみません…」

「いつまで学生気分でいる気ですか?
恋愛を楽しむのは結構ですがきちんと頭を切り替えて下さい。貴女が書類ミスをすることで俺にも迷惑がかかることを忘れないように」

「…………」

南野さんはそう言って去っていった。

なんだか今日の南野さん怖い。
いつもなら少し意地悪なこと言うだけで終わってたのに…

「(もしかすると、今までが甘くてこれが本当なのかも)」

彼が上司であることは分かってたつもりだけど、同い年という親近感で調子に乗っていたのかも。

南野さんに、嫌われちゃったかも…

そう思うとなんだか悲しくなって
昼休みになると私の足は自然に日下部さんのいる部署へと向かっていた。

部署を覗くとそこに日下部さんの姿はなかった。

「…あれ?」

キョロキョロと捜すがやはり見当たらない。

その時、ポンッと肩を叩かれた。
振り返るとそこには爽やかに笑う日下部さん。

「やっぱり昨日の人だ。
こんな所へどうしたんですか?」

「あ…」

日下部さんに会いたくて…

そんなこと言ったら引かれるかな?
そう思って私は口を噤む。

「…俺、ちょうど貴女に会いたくて…」

「え…?」

「もし良かったら、お昼一緒に行きませんか?」

「わっ私で良ければ…!」

日下部さんはにっこり笑って『良かった』と言った。
そして談笑しながら二人並んでお昼へと向かう。

その時私は知らなかった。

南野さんが、私達を睨むような目で見ていたことに…


















「えっ彼氏…ですか?」

「うん。いるのかなぁ…って思って」

ファーストフード店でお昼を食べながら日下部さんがいきなり聞いてきた。

私は顔を赤らめて

「その…今はいませんが…」

「でも幼なじみの人と仲がいいよね?」

「あいつはただの腐れ縁です」

「じゃあ…君の指導員の南野先輩は?
よく一緒にいるけど」

「み、南野さんは…」

顔を俯かせる私。そして

「ただの指導員で上司です」

「そっか。じゃあ今は本当にいないんだね」

「はい…」

「良かった…
じゃあ俺と付き合いませんか?」

「え!?」

突然の申し出に私は更に顔を赤くした。
だけど日下部さんの表情は真剣そのもので

「一目惚れなんです。貴女が好きだ」

「〜っ」

「付き合って欲しい」

「…………」

私は顔を真っ赤にしたまま、小さくこくりと頷いた。

「ありがとう。嬉しいよ」

私の手に、日下部さんの大きな手がソッと重なった。


実りある男女
舞い上がるほど嬉しい。
初めて出来た彼氏なのだから。




- 8 -

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -