○月○日。

その夜は夕飯を作るのをサボって行き着けのラーメン屋に行った。

「やっほぃ幽助くん」

「おー来たか」

「相変わらずお客さんいないね。
もうかってまっか?」

「うるせぇな。来る時は来るんだよ。
ぼちぼちでんなぁ」

幽助くんは私より年下だけどどこか大人びていて可愛い。

その上社会人としては彼の方が少し先輩だ。

とりあえず幽助くんは私につまみと水を出す。

おごり?わーい。と言うと酒飲めるようになってから出直してこいと殴られた。
痛いじゃないか。

「仕事はどーだ?」

聞きながらちゃっちゃと私が好きなチャーシュー麺を作り出した。

「ぼちぼちでんな」

「それはもういい」

「んーまだまだ慣れなくて大変だよ。
あ、聞いて下さいよ幽助さん」

「なんだよ」

「私の指導員…つまり上司なんだけど人使い荒いんだよ〜?
私の幼なじみには全然優しいのに差別だよね。
男同士でびっくりだよね」

「むしろ俺はお前の発想にびっくりだよ。
単にお前の仕事が遅いからじゃねぇのか?」

「ひど。みんなそう言うんですけど」

「どんな上司なんだ?」

「綺麗な顔をした上司。女みたい」

「へぇ。…はいよ!チャーシュー麺お待ちっ」

「わーい。…タダ?」

「ふざけんなテメェ」

いちいちケチくさい男だ。
そう言うとまた殴られた。

なんだこの男。乙女の頭をパカパカ殴るなんてどうかしてる。

「男より男らしいテメェが言うな」

「なんだとこの野郎!
チャーシュー麺旨いからって調子乗んなよ!」

「どーも」

幽助くんはそう言ってタバコに火をつけ、煙を吹かした。

そんな彼を見ながら私はチャーシュー麺をすすり

「ところで青年よ」

「ああ?」

「螢子ちゃんとはどうよ」

幽助くんが思いっきりむせた。

「どんくさ」

「うるせー!なんで螢子が出てくるんだよ!!」

「あれ。螢子ちゃんって名前じゃなかったっけ?
一回ぐらいお姉さんに会わせなさい」

「誰が!」

「式はいつ?」

「ぶっ飛ばすぞテメェ!」

いやぁやっぱり幽助くんは元不良だけどからかうと楽しいよ。

ただの不良にしてはきれいでがっしりと整った体格してんだよね。一体どこで鍛えたんだか。

「食ったら帰れよ!?」

「うふふ。照れ屋さん」

「いい加減にしろよこのアマ…!」

ここまでは幽助くんと会った時は日常茶飯事。

だが今回は、違うことが起きた。

「盛り上がってますね幽助」

後ろから聞こえてきたのはなんとも聞き覚えのある声。

振り返りたくないが振り返ってしまう。

「……君は…!」

見覚えのあるその方は驚いた顔をしている。

やっぱり、南野さんだった。

「幽助くん、はいお代」

「お、おお」

「釣りは良いぜ。あ、やっぱり今度返して。じゃ!」

まだチャーシュー麺が半分も残った状態で私はさっさと去ろうとする。

しかし、がっしりとイスに座った南野さんに腕を掴まれた。

「俺の友人が作ったラーメンを残すなんて許せないな。
全部食べて帰ってよ」

「や、もうお腹いっぱいなんで」

「一緒にレストランで食事した時はこれ以上の量を食べてたよね」

「あの時はお腹空いてたんで」

「麺類だから入れようと思えば入るよ。ほら座って」

あっさりイスに引き戻された。

「なんでぇ。知り合いだったのかよ」

「ええ。会社の部下です」

「ぶっ!?」

幽助くんはひたすらチャーシュー麺を食べる私を見て。

「おめーがさっき話してた上司ってまさか…」

「ごちそうさま!さようなら!」

今度こそラーメンを汁一滴も残さず食べきり、逃げるように走った。

『人使い荒い上司』とグチってたなんてバレたら会社でどんな目に遭わされるか!

意外な友人関係
「早く食べて送っていこうと思ったけど、逃げられてしまったな」
「蔵馬、いじめも程々にしろよ」
「可愛いがってるんですよ」




- 5 -

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -