部署移動してからもうすぐ一週間。
休日の今日は昼までのんびり寝て、その後適当に昼食をとった。
ぼんやりとテレビを見ていたが大して面白そうなものはなく、手に持っていた雑誌も何度か読み返したので飽きてしまった。
テレビを消し、外から聞こえる音しかしない静かな部屋で私は開けっ放しの窓から入ってくる風を感じてボーっとしていた。
「なんか…無気力だなぁ」
元々ひとりなのに、ここ最近孤独感が激しい。
一人暮らしは最低でも4年はしてるんだから、今更ホームシックもないだろう。
なんか、理由もなくやる気が出ない。
「…ちょっとブラブラしてみるかな」
気分転換も兼ねて。
そう思って私はキャミソールとショートパンツという格好から、のそのそとラフな格好に着替えたのだった。
特に行き先は決まっていない。
何も持たず、ただブラブラと町を歩いているだけ。
私が住んでるアパートは人通りが激しい大通りから離れている場所にあり、その周辺は昼でも人は疎らで割とゆっくりしている。
しかし、手ぶらはなんとなく落ち着かない。
日の光も強いことだし、日傘でも持って来れば良かったかな…なんて思ったけど、今の格好に日傘は明らかに合わない。
ちょっと焼けるぐらいなら別に良いか…
ぼんやり思って角を曲がる。
「にゃー」
同時に聞こえてきた声がこれだった。
ふと足元を見ると、子猫がこちらを見ていた。
子猫は人懐っこく私の足にすり寄ってくる。
…だが、毛の汚れや痩せ具合から見て明らかに捨て猫だ。
「…………」
今更見てないふりなんて出来ない。
今更知らないふりなんて出来ない。
でも、家はペット禁止なんだ。
咄嗟に目を閉じ、耳を塞ぐが、子猫は甘えるように足に体をすり寄せる。
「…〜っ」
その場に突っ立って迷いに迷った末、私は盛大にため息をついてその猫をゆっくり抱き上げる。
そして猫に
「いい?家には入れないから。
ていうか、入れられないから」
念を押すように言うと「にゃあ」と鳴いた。
タイミングが合っただけで理解は出来てないだろう。
ため息をつき、私はアパートへと戻る。
そしてアパート付近で見つからなさそうな場所を見つけ、そこに途中店で貰ったダンボールを置いて子猫を入れる。
急いで部屋に戻り、小皿にミルクを入れ、何を食べるか分からなかったのでとりあえずパンを一枚握って走って戻ってきた。
子猫はダンボールの中で大人しくしていた。
ミルク入りの小皿を子猫の前に置くと、子猫はしばらく警戒したがやがて舐め始める。
その横に食べやすく千切ったパンを置いた。
「残念だけど私は飼えないよ」
「にゃー」
子猫は顔を上げて私を見るとそう鳴いた。
小さな命
「か、飼わないってば」
「にゃあ」
「そんな目でこっち見ないでよ」
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