研修期間は残り3日となったお昼の時間。

今日も今日とてお昼に集まった同僚達とのガールズトークは弾む弾む。

だが、その内容は研修期間の感想会のようなものだった。

「あと3日だねー」

「あー!ようやくあの説教ババァから解放されるー!」

「主任のババァだっけ?
「〜ザマス」なんて言ってそうな眼鏡だからザマスなんて呼ばれてるよね」

「そー。口うるさいったらないよ。
この間もロッカー室でケータイで電話してたら「会社の中で個人のケータイは必要ない!」って言って無理やり電話切らされたし」

「うわーウザッ。マジでウザイね。
ザマスが指導員って不幸としか言いようがないよねー
それに比べて希紗はいいな〜。優しくてかっこいい南野さんだもん」

「いやいや。希紗は私達と違って南野さんが苦手だから、逆に辛かったんじゃないの?ねぇ希紗」

「……………」

「…希紗〜?
お箸止まってるよー?それに今お箸で掴んでるの肉じゃがが入ってる紙だよー?
紙を食う気かーい?」

「え、あ…」

「どうしたの?ボーっとして」

「あ…うん、ちょっと…ね」

「倒れたお母さんが心配?」

「お母さんはもう大丈夫だよ。
だからそんなに心配してない」

「でもボーっとしてたし…
…あ、分かった。心配じゃなくて安心してるんでしょう!
あと3日で南野さんから解放されるー!って」

「え」

「えー?相変わらず希紗って見る目ないなぁ
私だったら落ち込むよ。
後3日で南野さんと離れるなんてー」

「ほんとよねー。あんなかっこいい南野さんとずっと一緒にいたいのに
あと3日で離れるなんて考えただけで泣ける」

「でもさ、うちの会社って部署移動出来るから良いよね!ちょっと変わってるけど。
私南野さんがいる部署に移ろうかな〜」

「個人の意志の部署移動は一回だけで即戦力が条件だけどね。
でも南野さんがいるなら私も頑張れそう!私も移動しちゃおっかな」

「えー?私もする気なのにー!
これじゃ競争率上がっちゃうじゃん。採用人数決まってるのにぃ」

「私も考えてたのに!
あーあ、最初から南野さんと同じ部署の希紗が羨ましいっ
…そういえば、希紗は部署移動しないの?」

「前「今の部署合わない」って言ってたもんね」

「あ、うん。移動…考えてるよ。
広告とか、企画とか…多分そんな感じの部署」

「へー。でも、その関連の部署の部屋って今いる部署から超遠いよね」

「だね。今いる部署が確か3階だったよね?」

「うん。
広告とか企画は、たしか10階」

「うわっ遠いー」

「いやー!南野さんとそんなに離れるなんて私なら死ねるー!!」

「なにそれ超短命。気持ちは分かるけど」

「希紗ってほんとつくづく勿体無いよねー
南野さんと同じ部署で南野さんの部下という美味しいポジションで。
なのに部署移動とかさぁ。
希紗知らないと思うけど他の女性社員からかなり嫉妬されてたんだよ〜?」

「え、知らなかった。
…まあでも、予想はしてたよ。
刺されなかったから命拾いしたのかなー…なんて」

「ほんとほんと。
あと1ヶ月ぐらい研修期間あったら希紗確実に刺されてたよ」

「ちょ、笑い事じゃないような気がするんだけど」

「部署移動したら南野さんの為にお弁当作っちゃおっかな〜
ねぇ希紗。希紗って何回か南野さんに作ってあげたことあるんでしょ?超噂になってたし」

「ほんの気まぐれだけどね。
南野さんファンの情報網舐めてたよ」

「南野さんっておかずとか何が好きなの?」

「なんでも食べるよ。あの人。
私の不味い弁当も美味しいって平らげるから味音痴なんじゃないかな?
泥団子あげても食べそうな勢いだよ」

「それはない。流石にない」

「南野さんちょっと天然なんだぁ
なんか可愛い〜!」

「天然で鈍感だけど優しくてかっこいいっなんて惚れるしかないよねぇ!
尚更印象づくように頑張らなくちゃ!」

「もう好きにして…」

「好きにしてだなんて他人事みたいに!
希紗しか南野さん情報多く持ってて聞き取れる人はいないんだから、恋する友人に協力しなさいッ」

「ああ!ちょっそれ私のデザートのアイス!
返して!食うなッ持ってくなぁああ!!」


心にあるわだかまり
南野さんと一緒にいられる時間は残り3日。
どうして、だろう。
心に…小さなわだかまりが…激しい、消失感が。拭えない。




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